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92歳 三石巌のどうぞお先に 41

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


酵素の働き

DNAのきずものを修復

 前回までの話で、細胞のがん化の手続きがややこしいことはわかっただろう。そこに、イニシエーション(引き金)▽プロモーション(後押し)▽プロパゲーション(増殖)の三つの段階があることもおぼえたかな。

 このうちプロモーションは、二つとか三つとかの段階にわかれるらしいこともわかってきた。これも、がんの種類によって、いろいろになっているんじゃないかな。

 がんが、このプロモーションの段階にあるときなら、もとにもどることがある。治すことができるって話があるんだ。耳よりな話じゃないかな。

 これは、DNAの修復ができるってことになるが、そのとき、ビタミンAが役に立つといわれている。プロモーションの段階では、がん化のプロセスがもたついているはずだから、何年も時間があるだろう。そのスキに、ビタミンAをぶちかますことができれば、がん学校の小学生が退学ってことになるんだな。

 このメカニズムについて考えてみようじゃないか。

 DNAのきずものをまともにするのには、たとえば、きずものをえぐりとって、まともな部分ととりかえればいいわけだ。こういうような体内の作業をうけもつものを「酵素」という。

 このことばを、キミはどこかで見たか、聞いたかしているだろう。新聞でもテレビでも、おなじみのはずじゃなかったかな。

 酵素はどれもタンパク質だ。余談だが、あるとき、知らない男性から電話がきた。「お前さんは、タンパク質でない酵素があるのを知っているか」ときた。ナントカ酵素を売っている人物だった。ボクの本に「酵素食品をありがたがるのはおかしい」と書いてある。それを見たんだな。

 体の中では、四六時中いろいろな化学反応がおきている。「代謝」ってやつだ。すべての代謝をとりもつものは、酵素なんだ。

 酵素はタンパク質だから、その設計図はDNAにある。遺伝子にある。酵素は入用なとき、いるだけじぶんの体でつくるのがたてまえなんだな。

 遺伝子のどれかがやられてたら、修復遺伝子がはたらきだして、修復酵素をつくる。その酵素が、DNAのいたんだところを修復するわけだ。それが、プロモーションの遺伝子を修復すれば、がん化コースがバックする。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。

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