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92歳 三石巌のどうぞお先に 6

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


ビタミンC療法

必要量に個体差の問題を発見

 文献によれば白内障の原因はビタミンCのふそくだとある。ボクの同級生にビタミンCの製剤などとっているにんげんはいなかった。それなのにボクだけがふそくとはなにごとだ。
 ボクはむずかしい問題にぶつかった。ボクはじぶんなりにこれを解いた。   そして、そこからボクの栄養学がうまれ、ボクの健康管理学がうまれた。これが親ゆずりの目のおかげだとすると、親の恩は山よりも高く海よりも深いってことになってくるんだな。
 そのころボクの家には少年雑誌の編集者がさかんに出入りしていた。こどものぎもんにこたえる記事をあちこちに書いていたからだ。
 そのなかに中年の女性がいた。かの女はビタミンCの眼球注射で白内障をなおしたっていうんだ。ボクがからだをのりだしたら、その医者はもうビタミンC療法をやめたという。天然品が手にはいらなくなったからだそうだ。ボクはガクンときた。
 ビタミンCはアスコルビン酸ともいう。酸だから目玉に入れたらいたくてとびあがるだろう。合成品のビタミンCはふつうはこのアスコルビン酸だ。天然品はちがう。インドールと結合してアスコルビゲンっていう中性のものになっている。だからしげきがないから注射ができる。これはボクの見解だがね。
 ボクのそのころの考えはこうだ。白内障っていう眼病は水晶体がすきとおらなくなっておこる病気だ。ビタミンCはからだじゅうにゆきわたっているが、水晶体や副腎皮質や卵巣などにとくにたくさんたまっているものなんだ。本で読んだんだがね。
 というわけで、ビタミンCはひっぱりだこになっている。そうしてそれは、それぞれの持ち場ではたらいている。水晶体でどんな働きをしているかは知らないが、なにかのやくめをはたしているだろう。ボクの目の水晶体はビタミンCの働きがやりにくいんだろう。だからふつうの人よりビタミンCがたくさんいるんじゃないか。
 これがそのときボクの頭にあったことだ。水晶体のなかにはいろいろな化学反応がおこっているだろう。そこにビタミンCがかかわっているはずだ。
 それでなけりゃ、そこにビタミンCがあつまっている理由はないだろう。その化学反応はビタミンCをまきこんでいるが、ボクのばあいその量がおおくないと、反応がうまくすすまない。ここに、ビタミンC必要量の個体差の問題をみつけたわけだ。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。

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