92歳 三石巌のどうぞお先に 48
三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)
「参加の生活」
年齢に比例する時間の価値
「どうぞお先に」ってタイトルの意味がそろそろはっきりしたころだろう。ついでに、高タンパク食やビタミンの意味もだ。
要するに、栄養がだいじだってことだ。だが、栄養だけで十分ってことはない。活性酸素のことがあるからなんだ。
だから、栄養物質のほかに、スカベンジャー(老化などの元凶とされる活性酸素をしまつする物質の総称)をみのがしてはいかん。ビタミンA・B2・C・E、それに、カロチンとかキサントフィルとかカテキンとかね。
ボクが力こぶをいれたのはタンパク質だ。それは、タンパク質が軽くみられているのがよくないと思うからだ。また、ボクの体質論はビタミンにかかわっているが、その本流はHLA(白血球の血液型)で説明される。それによると、八十歳をこす人はDW9というHLAをもつとされていた。ところが国民の栄養がよくなると、DW9がないのに八十歳をこす人がおおぜいでてきた。
一卵性双生児はどこからどこまでうりふたつだ。ところが一方にビタミンCをやると、そっちの身長がたかくなる。ここにも栄養の価値の問題がみえてくるんじゃないかな。
このへんでボク自身のことを書くことにしよう。
ボクは二十年ほどの糖尿病患者だ。インシュリンの注射をやっている。二年か三年に一度は血糖値の検査にゆくが、数値はほとんど一定だ。老人無料検診ってのがあるが、いったことはない。人間ドックなんて振り向いたことはないんだな。ジョギングどころか散歩もやらん。毎日かかさずやっているのは、ストレッチとマッサージ。アイソメトリックスは二日に一回だ。どれも自己流さ。
健康にいいものや食品がわんさと宣伝されているが、ボクはわけのわからんものには一切とりあわん。
時間の価値は、余命に比例するって考えたらどうか。九十歳の一時間の価値は四十五歳の二倍ってことになる。価値の高い時間をテレビやゴルフにぬすまれてどうするんだ。
ボクの食生活の基本はもうわかってもらえただろう。朝食はミキサーに牛乳をいれ、そこに配合タンパクや水溶性ビタミン、レシチンや食物繊維、バナナ、温泉卵などをぶちこんでガーッとやる。スカベンジャーだのイチョウ葉エキスだのも、まぜちゃうんだ。これをのみながら脂溶性ビタミンやミネラルをのむ。生きがいってものがある。ボクはこれを「参加」という。歴史参加の意味だ。サルトルは「参加の文学」といった。ボクのは「参加の生活」かな。
三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。
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