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92歳 三石巌のどうぞお先に 3

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


遺伝子の秘密

健康管理は細胞がポイント!?

 同年の友だちがだれももっていない白内障という病気を、どうしてボクがもっているか、がここでの疑問だ。
 親の目がわるけりゃ子の目もわるい。それだけのことじゃないかなんていうことだったらむかしの人間の頭だ。今の人間の頭はもうすこし進んでいるはずじゃないかな。
クリスマスがちかづくとモミの木がでてくる。このあいだアメリカの農園でそれをそだてている風景がテレビにでてきた。ボクはびっくりした。木振りがみごとにそろっているんだ。せたけも形もみんなウリフタツだ。こんなことはもうすたれたようだが、つべこべいわなくたって意味はわかるだろう。
解説があったかどうかわすれたが、これは木振りのいいモミの木のクローンなんだ。クローンていうのは近ごろはやりのバイオのキーワードだ。こういうものを知っておくのも損じゃないはずだ。
 ランの花はすこしまえまではねだんがたかくてやたらに手にはいるものじゃなかった。それが、いまはけっこう手ごろな値で売っている。それはバイオっていう新しい技術のおかげだってことは、花屋でなくたって知ってる人がいる。このランがクローンなんだ。アメリカの農園のモミの木とおなじだ。
 ランでもモミでも種でふやすのがありきたりのやりかただ。クローンは違う。冗談にアインシュタインのクローンをたくさんつくったらどうかなんてことが話題になったことがある。
 キミははこれを脱線だとおもうだろう。どっこいそれは認識不足だ。ボクの健康管理学は分子生物学からでている。クローンも分子生物学からでているんだ。
分子生物学のトップキーワードはDNAだ。それを遺伝子といっていいことにする。先週、設計図ってことばがでてきた。DNAは生命の設計図だなんていわれる。それでボクは設計図ってことばをだしたんだ。
植物でも動物でも、そのからだは細胞からできている。よけいなことかもしれないが、これはサイボウではなくてサイホウだ。
すべての細胞には同じDNAがおさまっている。全身の設計図がおさまっている。種子や卵子とおなじだ。だから、種子や卵子から一人前の生物がでてくるのなら、どこかひとつの細胞をそだてても一人前の子ができあがるはずじゃないか。クローンがそれだ。
血管網の話がクローンに飛んだのはなぜかって。ボクは大風呂敷をひろげているんだ。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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