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『看板のツノ』

あのツノは看板代わりなのだと薬屋の店主は語る。
東館に掲げられたツノは長いものが三本、やや短いものが二本。丁度”日”の字を横長にしたように組まれている。
店の中もツノだらけだった。鹿のツノはもとより、羊のツノ、牛のツノ、犀のツノ、果ては遥か北の国から取り寄せた一角獣のツノまである。
これらを粉にして秘伝の比率で混ぜ合わせた薬は万病に効くと言う噂だ。
しかし、私の興味は薬にはなかった。看板のツノ。あの長さ、太さ、巨大さ。一体地上にあのようなツノを持つ生き物がいるだろうかと思わせる。何処か畏怖すら覚えさせるツノ。嘘かまことか、一匹の獣に生えていたのだと薬屋の語るツノたち。
私は恐る恐る薬屋に聞いた。あの五本のツノは何のツノなのかと。
薬屋は言った。
五本と言ったら龍角さ。

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