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三尾神社

 三尾神社は近江の大津に坐すお宮です。この神社は珍しく「うさぎ」が神様のお使いです。

 JR大津駅の北方、三井寺の背後にそびえる長等山は古くからの信仰の山でした。また、京都の鹿ヶ谷や北白川に出る道もあり、交通の要衝でもあったようです。
 その古い信仰の山のふもとに坐すのが三尾神社です。御祭神は伊奘諾命です。上古の昔、伊奘諾の命がこの地に降臨しました。その時に伊奘諾命は赤、白、黒の三つの帯を身にまとっており、その帯がたなびく様が三つの尾に見えたことから三尾神社と申すようです。

境内

 なぜお使いがうさぎなのでしょうか。
 それは神様がご出現になったのが卯の年、卯の月、卯の日、卯の刻で、卯の方からお越しになったからと伝えます。

軒瓦にもうさぎ


 三尾神社から見て卯の方角ではありませんが、近江で伊奘諾命と申しますとやはり多賀大社のことを思います。
 大津の北東、湖東地域に坐す多賀大社は伊奘諾命と伊奘冉命をお祀りする古社です。古事記にも伊奘諾命が坐すのは淡海の多賀とある通り、古くから信仰されていた場所です。なぜ近江に伊奘諾命と伊奘冉命の信仰があるのでしょうか。その謎は私はよく知りませんが、興味深いことです。

奉納されたうさぎ

 三尾神社の古い歴史ははっきりとしません。しかし長等山には千石岩という大きな岩が山頂付近にあったり、皇子山古墳という弥生期に遡る可能性のある古墳があったり、その歴史がとても古いだろうことは推測できます。さまざまな考古学的な調査が近江の歴史、ひいては日本の歴史を紐解いていくことを期待してやみません。

 三尾神社には重要文化財の本殿があり、大変優美です。また、社殿の前を流れる琵琶湖疏水、隣接する三井寺など、とても見どころの多い地域は散歩に最好適です。
 忙しい仕事を忘れてこのあたりをゆっくり歩けたら楽しいだろうと夢想します。しかし忙しい日常があるから、お宮へのお参りもまた意味があるのかもしれません。
 三尾神社へはJR大津駅から歩いてもさほど遠くありません。大津は大津百町とうたわれた古い街並みが残り、人も優しいですからゆるゆると歩いても楽しいかと思います。

琵琶湖疏水と桜 疏水は観光船が蹴上まで出ています

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