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時間

時間が経って、
過去の美しかった記憶が
少しずつ少しずつ褪せていくのは事実で
だけど輝きを失わないこともまた事実で
そこに置いてある感情だけは真実で
それを取り戻せないことは事実である

今日の1秒後には
感情が動いて
行動が変わって
事実が決まって
それが続いていくから
明日というものが
想像した現実とは
かけ離れていく

優しい笑顔の裏側には
知りたくもなかった顔があるなんて
人間誰しもそうで

自分の知らない自分がいることは
真実であると思う。

昔食べられなかった食べ物が
時を経て急に美味しいと感じるように

昔は平気だった昆虫が
時を経て気味悪いと感じるように

人間の感情は
いつどうなるかわからない。

自分にだって、家族にだって
親友にだって、神様にだって
きっとわからない。

大人になった
という一言で
物事は解決するようになっていくが

大人という基準は
人によってバラバラで

歳をとって体が大きくなった人間でも
子どものままのような人間がいるように
誰が大人と定められるかなんて
そんなことは誰しもがわからない

風邪をひいて、数日後にはまた元氣になる
長引く人もいれば
命を落としてしまう人もいる

だから時間がもたらす薬効は
平等とは限らない

時間の薬効が早い人もいれば
遅い人もいて

それは子どもであっても大人でもあっても
時間というものに耐えられずに
その世界から旅立つ人たちがいる

今の、先の見えない
ジワジワと押し寄せてくる
恐怖の時間に耐えることに比べたら
一瞬の勇気を振り絞って
想像もできない痛みや恐怖を迎えて
自分という存在を楽にしてあげるほうが
いいという考えを持つ人がいてもおかしくない

世の中の全ての薬が
全ての人間たちの特効薬ではないように

時間がもたらす薬効も
全ての人間に平等ではないということ。

強く心から願っているものを
明日がくる素晴らしさを
現実を耐えられる強さを
当たり前のようにあった日常を
1秒後に失うかもしれない
いつ失うかわからない

それが当たり前のようにあった命も同じで

時間が経つということは
命を削っているということで

自分だけがもっている
美しい記憶だって
命と引き換えに失ってしまうかもしれないし
命と共に失ってしまうかもしれない

時間というものは
宝物にもなって
薬にもなって
希望にもなって
お金にもなって

その限られた時間は
自分のために使ってもいいし
大切な人に使ってあげてもいい

大切な人の時間が止まるのを見届けるより
私の時間が先に止まれと思う

そしてこの時間が続く限り
誰かのために尽くしたいと思う
願わくば心の薬となるように。

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