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【フィナンシェ話#3】子どもが寄付金を大人から集める

 様々なバックグラウンドの方に伺う、幼少期のお小遣い、お年玉、寄付や投資のこと。そこから自分の子供につながるフィナンシェなヒントを探ります。

 フィナンシェの会に関わっていただいている額賀佑佳さんに、小学校5年生の時から4年間米国で経験した寄付文化を中心に伺いました。日本にはない楽しい仕組みが多くあり、自分の子どもにも体験させてあげたいです。

■ 寄付集めの仕組みは多種多様

── 寄付が幼い頃から身近にあると言う話を耳にしましたが、具体的にはどのようなことなのでしょうか。

額賀さん:まず公立の学校自体が資金不足にある背景が日本と違います。みんなで学校のために寄付をしましょう、という身近な動機が生まれているんです。学校の年間スケジュールに寄付を募る様々なイベントが組み込まれていて、他にも遠足や修学旅行のために寄付を募った記憶もあります。年に何回か、講堂に本がたくさん並べられて、その売り上げ金の一部が学校に寄付されるBook Fairは、私にとっても楽しみなイベントで、自然と行事に組み込まれているような感じですね。


── 宗教の違いもあるのかな、と考えていましたが、遠い海外の国に対する寄付と、自分の学校への寄付では、確かに動機付けが違いますよね。

額賀さん:その他にもFun(d) Runというものがあって、マラソン大会で何周走ったかを数えて、その数だけ寄付をしてもらう行事もありました。

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   (Fun(d) Rundでは走った周数を背中に貼った紙に記録してもらう)

── それは誰がお金を出して寄付するのですか?

額賀さん:自分の親や、親戚、ご近所さんなどに予めお願いして回り、「寄付しますよ!」という誓約書にサインしてもらうんです。自分のスポンサー探し、ですね。そういう意味では色んな人を巻き込んで寄付金を自分で集める、という取り組みは多いですね。
 他にも、クリスマスやイースターといって季節の行事に絡めた寄付もあります。ユニセフにあるような、商品を買うとその一部が寄付にまわるというスキームと同じです。学校からカタログをもらってきて、そのカタログに載っている商品を買ってくださいと大人たちにお願いして回ります。親戚や近所の人、私の場合は知り合いの日本人家族にもお願いしていました。その購入のチェックがついたリストを子どもたちが学校に持って行き、ギフトが届くと買ってくれた人たちのお家に届けに行く、ということをよくしていました。

── 日本では知り合いに対してでも「これを買ってください」と言いにくい関係があると思います。

額賀さん:子ども心に、たくさん買ってもらえると嬉しかった記憶が残っています。それに、みんなお願いしに行っても笑顔で快く買ってくれるんですよ。お互い様という意識もありますね。こないだ買ってもらったから、今回は買ってあげようとか。また学校に寄付したいという目的が身近であることも、もちろんあるかと思います。
 カタログに載っている商品には、たとえばクリスマスの時期だとカード、ラッピング用品、チョコ、キャンドルやオーナメントなどがありました。家庭に必要なものだから買ってもらえる要素もありそうですね。

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■ 大人は子どもを管理しすぎかもしれない

── 周りの人を巻き込んでお金を集める、という発想はなかなか日常生活では出てこないので、ずっと日本生まれ日本育ちの私にとってはとても新鮮な話です。

額賀さん:そうかもしれませんね。米国の金融教育が進んでいる、という話はありますが、私が住んでいた当時は具体的に何か学校で教わった記憶はないですね。その代わり、自分がお金を稼ぐ・寄付金を集めるという経験はたくさんしました。
 私が住んでいた地域では、13歳になるまで1人で留守番をしてはいけなかったんです。なので、親が子どもを置いて出かける場合はシッターさんを雇う。そのシッターは、13歳以上の学生がやっていることが多かったです。私自身も、友人の紹介で3歳と5歳の姉妹をよくシッターをしに行っていました。大体3時間くらい、そこのお家はパパとママが夫婦の時間を取るために夜出かけている間、夕飯を食べさせて寝かしつけるということをしてお小遣いを受け取っていました。なので、自分でお金を稼いで、自分の意思で使うということが当たり前でした。帰国してからは、買い物一つとってみても、学校の規則や大人たちからの管理が厳しいなと感じることが多かったです。

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── 学校の規則は当たり前のように入学してから存在していたので、当時は管理されているなど疑問を持つことがなかったですね。

額賀さん:お年玉に関しても同じことが言えるかもしれないです。私が子どもの時、お年玉は全額もらっていました。それを、自分で使う分と貯める分で分け、貯金は郵便局に行って記帳をしていた記憶があります。
 先日、年少と年中の娘たちにも、「使う」「貯める」「寄付する」「投資する」の4つに分かれた貯金箱のうち「使う」と「貯める」に今までのお年玉を自分で分けて入れさせてみました。お年玉は親が全部管理する、という家庭が大半だと思いますが、むしろ管理をしないで自由に使わせてみる、見守るという姿勢も必要なのかもしれません。そのためにも、娘たちとはお金の使い方について、日頃からたくさん会話しておきたいなと思っています。

【インタビューを終えて】
 レモネードスタンドなどで有名な米国の寄付の仕組み。実はそれだけではなく、様々なプログラムが学校に組み込まれている(学校自体が寄付金を必要としている背景があるからですが)ことに驚きました。周りの人も巻き込んで寄付金を集める、という仕組みは日本でも真似できる部分があるかもしれないと感じています。フィナンシェの会を通して、寄付に限らず、自身でお金を稼ぐという経験を子どもたちに届けたいです。

 長時間に渡ってお時間を頂戴しました額賀佑佳さん、ご協力くださりありがとうございました。

お話を伺ったのは・・・
額賀佑佳さん
関西電力、大和証券投資信託委託、三菱UFJリサーチ&コンサルティングを経て、2013年よりフリーランスのESG(環境・社会・ガバナンス)コンサルタントとして、サステナビリティレポートをはじめとする上場企業の投資家に向けたESGコミュニケーションを支援。
自身のキャリアで得た経験から、幼少期における金融教育の必要性を強く感じており、フィナンシェの会をサポートしている。
2003年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2012年英国アーユルヴェーダカレッジ総合プロコース卒業。

(取材、文:Mari Kamei)

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