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警部からの呼び出し、怪盗の予告現場にいた流れ者が阿呆のようにお前の名前を繰り返すと。 対…
年が明けたら頂上作戦だ、本国から部隊が来る。 ライトアップされた賑わいの中、ダックワーズ…
若頭はこの夏よく見かけるレモネードの氷を揺らし、扇子をあおいだ。 「オヤジはもうだめだな…
カタギになって移住した同期を訪ねた。 街が遠く、海が近い。人がまとう服も空気もゆるやかで…
「ネクストマリトッツオ党について話せと? 前にも言ったように私のファミリーは関わらない…
キャトルカール裁判長の噂は塀の中で聞いたことがあった。 卵砂糖バター小麦粉四方がすべて…
フィナンシェヤクザは一度だけカヌレを匿ったことがある。 焦げ臭くグニャグニャ釈然としないギャング連中とは距離を置いていたが、旧市街の水場に行き倒れた女はひどい傷を負っていた。 切り裂かれたマントの下はぐっしょりと濡れ、抱き支えると洋酒の香りが移った。 ほど近くのモザイク装飾が施された塀門を叩く。 「しばらく預かってくれ」 厄介な頼みを前にしても、バクラヴァは断らなかった。 ヒジャブの奥の緑の瞳がカヌレを一瞥し、従者に素早く手当の指示をした。 「貴方には借りが
『今宵お宝を頂戴いたします』 ダックワーズ警部の悔しそうな地団駄と言ったら今日も傑作だ…
夏の名残を洗い流すような肌寒い雨だった。 フロランタン偵はコートの襟を掻き合せ、今日も…
「マリトッツォ党のことを知りたいのだろうが、私のファミリーは手を出さないことにしている…
フィナンシェヤクザの南雪が呼びつけられたカフェで、若頭は大量の生クリームを挟んだブリオ…
マドレーヌマフィアの作るフィナンシェを食べたことがある。 製菓訓練で一通り作らされるか…
抗えぬものは列車の眠気。 福生に行くはずが、拝島で眠りこけて拝まなかったのがまずかった…
組のいざこざを収めるため服役中だ。 戻れば幹部だが、喧騒と隔たれた檻の中も悪くはない。 光沢スーツを脱いでからは、揃いの囚人服で牛や鶏の世話をし、麦畑を耕している。 模範囚ともなれば、製菓訓練を許された。 乳と卵、小麦粉から次々と狐色の菓子を生み出すマーさんのことが好きになった。 バナナマフィンが絶品だったから、マフィンのマーと呼ばれていた。 互いの肌をまさぐった夜、仄かな灯りでマーさんの背に貝の彫物が浮かんだ。 「そうだ、マドレーヌマフィアだよ。気づかなか