あらての
フィナンシェヤクザの南雪が呼びつけられたカフェで、若頭は大量の生クリームを挟んだブリオッシュを頼んだ。
「流行ってるんだろ」
「自分はオレンジピール好きませんから」
「マドレーヌも嫌いだしな」
例外はあるとしてもここは肯く。
南雪の選んだレジ前のフィナンシェを見て
「お前らしい」
「悪は単純でいいと思ってます」
べったりした腹芸も、格好つけると見せかけての裏切りも苦手だ。
自らの意思を筋とし、導かれる答えはシンプルに。
割れ目から溢れる乳脂肪を頬張る若頭と目が合い
「下品とか思ってるだろ」
「いえ」
白く汚れた口の端が小声になる。
「マリトッツォ党にきな臭い動きがある。探ってくれ」
粉と脂と糖が絡み合い、この街を支配する。
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