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「資金提供だけが応援ではない」ーー高橋祥子が分けてもらった夢に向かう大きな力

FiNANCiE magazine(フィナンシェマガジン)はドリームシェアリングサービスFiNANCiEによる、『応援』をテーマにしたwebメディアです

遺伝子を調べれば、自身の健康リスクや太りやすさなどの体質、祖先のルーツに至るまで様々な情報を知ることができます。高橋祥子さんが提供する「遺伝子解析サービス」は、これまで個人ではなかなか機会がなかった個人での遺伝子解析を、自宅で気軽に調べられるサービスです。社会人経験がないまま起業したため、すべてがわからないことだらけだったという高橋さん。落ち込んだ時、何もわからない彼女に前を向かせてくれたのは、応援してくれる人の存在でした。

<Profile>
高橋祥子
1988年大阪府出身
株式会社ジーンクエスト 代表取締役
株式会社ユーグレナ 執行役員
大学院在学中にゲノム解析サービス会社「ジーンクエスト」を設立。個人向けのゲノム解析サービスを提供し、蓄積されたデータをもとに解析、病気予防や治療への活用を目指している。「病気の人を直すのではなく、病気になる前に予防したい。」という想いのもと、サービスの普及とそのデータ解析による研究を行なっている。
2017年に株式会社ユーグレナの子会社となり、2018年同社の執行役員の役に就く。


ブレない自分を作ってくれた、父からの言葉


中学時代は吹奏楽部に入り、大阪府の代表としてトランペットのソロ大会に出場、大学院生でもあった起業当時、二足のわらじを成し遂げるために、博士論文を集中して2週間で仕上げた。なぜ彼女は、そこまでストイックに目標に向かって突き進むことができるのでしょうか。

―高橋さんの目標に対する推進力がすごいなと思うのですが、もともとそういう性格なんですか?

ストレングスファインダー(177個の質問に答えることで、自分の強みの元がわかるWeb上の才能診断ツール)で「達成欲」や「未来志向」が上位に入っているので、もともとそういう素質なのかもしれないですね。もし私の未来がバラ色だとしても事前にそれが決まってしまっていて、今の努力があまり関係ないとしたら不幸だなと思うタイプなんです。想定の範囲内のことしか起こらないってなったら、人生の豊かさってなくなるんじゃないかなと。今よりも、今によって未来が変わることの方が私の中では重きを置いていると思います。

―どうしてそこまで、自分の道を信じて突き進めるのでしょうか?

父がよく言ってくれた「自分が信じるものや信念、自分の世界を深く持て」という言葉の影響は大きいと思います。他人の評価を気にせず、物事の判断を自分軸に戻す、ということを教えてくれたんです。

―「自分軸に戻す」とはどういうことですか?

中学生の頃、吹奏楽のコンクールで敗れて落ち込んだ時に「自分がやりきったかどうかを評価軸にしなさい」と教えてくれました。感性や技術点以外のところで、評価する側の好きか嫌いかという感情は多少なりとも入ってくるから、それに左右されるなと。
逆に修士課程修了の時に研究で賞をいただいたのですが、その時は「他人の評価で一喜一憂せず自分がやり切ったかどうかで考えろ」と怒られました。結果が良い時も悪い時も、自分の評価軸で判断しなさいということです。

―なるほど。

本質ではない評価をされる事って、あると思うんです。「あの人が評価しているからすごい」とか、「賞をとったからすごい」とか。賞をいただくことや注目されることはありがたいのですが、起業家は特に、事業に対して批判されたり理解されないこともあるので、そういう他人の評価軸に寄りすぎてしまうととつらい時につらい。そういう時に、この考え方に立ちもどれるとブレないでいられます。

―それは素敵な考え方ですね。自分の世界を深く持ち、進んできた中でつらいな、辞めたいなと思ったことはありますか?

自分が目指しているものに対して何もできていないと、ちゃんと夢に向かえているのだろうかと葛藤することはすごくありました。その度に、私がやりたいことはなんだっけと立ち返ります。研究とビジネスのどちらかという話ではなくて、最終的な目標にすべて繋がっているんだと俯瞰してみると、頑張れるんですよね。

―なるほど。最終目標を見つめ直すということですね。

やりたくない、しんどいことも、すべて夢に繋がっているわけじゃないですか。私の場合は生命科学の力を使って今ある研究成果を社会に提供する。そして新たにデータを集めることで、また科学の研究が進んでいくという仕組みを作りたくて事業を始めました。つらいな、と思ったら物事を一度引いた視点からみて、しなやかに自分の考え方を変化させた方がいいなと思います。


視野はしなやかに変化をさせていく


―一生懸命夢に向かってしまうと、どうしても目の前のことでいっぱいいっぱいになってしまいがちですよね。

そうならないために、視野を広く持てってよく言われますが、そんなに言うのであれば、もともと遺伝子に埋め込まれて生まれてくれば社会はうまくいくんじゃないかと思いませんか?でもなぜそうなっていないかというと、個体として生き延びて種として繁栄するという生命の大事な生存意義が優先されなくなってしまうからです。

―もともとの遺伝子的に、人は視野が狭くなるようになっていると。

子供の時はみんなわがままで、食べ物を争うじゃないですか。それは自分が生き延びなければという本能だと思います。だって、子供が「お先にどうぞ」とか言っていたら栄養が摂れなくて死んでしまいますよね。幼いときには視野が狭いことがある種の生存戦略ではないかと思うんです。でもそこからより生きるステージが変わったときには、後天的に視野が広がっていかないといけない。それは、視野は切り替えられる、ということを知ることによってできると思います。

―たしかに、その切り替えを知っていたら、目の前のことがつらいと思った時でも少し気持ちが楽になる気がします。

視野は共有できるもので、人に移っていくものだと思うんですよね。昔、経営者の先輩に「こういうことができなくてつらい」と言ったら、「それをつらいと思うほど、やりたい事業はやりたくないことなのか」と言われて、そういえば全部やりたいことに繋がってるんだったと初心を思い出しました。つらいことって目的がなければやりたくないと思うけど、もし例えば「このつらい業務をやったら自分の子供が助かる」という状況だったら絶対にやると思う。きっと、そんなにつらいって思わない。どの視点で見るかによって捉え方が変わるというのは、その先輩に教えてもらったなと思います。

ー同じ物事でも見る角度や広さを変えれば、解釈は変わりますもんね。

人に応援してもらうって、純粋に資金を提供するとかそういうことだけではなくて、他の人が持っている視野を伝えることだと思うんです。応援をする意味はそういうところにもあると思います。


誰に応援してもらうか?どのように応援してもらうか?


―事業を一から立ち上げ、応援してもらえて頑張れたなと感じる思い出はありますか?

私にとってのメンターの1人で、常に未来の話をする方がいるんです。未来に向かって何をするかを常に考えている方。純粋に経営のことを教えてもらっただけではなくて、そういう姿勢や熱を分けてくれるような方です。

―熱を分けてくれるような人ですか。

個人の味方をしてくれる方なんです。会社や事業がうまくいきそうだからという理由で応援してくれる人はいっぱいいますけど、「会社がうまくいかなくてもまたやろうよ、なぜならあなたを応援しているから」と言ってくれる。資本市場は特に、儲かるから応援するという人はたくさんいますけど、そうではない存在がいてくださるのは、ありがたいです。

―その人自身の幸せを願う、そんな出会いは幸せですよね。

応援する理由がその人自身を切り離して見ているのか、その人と自分の関係性を見ているのかってだいぶ違いますよね。

―やっていることが儲かりそうだから応援するのか、その人自身の挑戦を応援するのかという話でしょうか。後者であれば、例え何かを失敗してもまた立ち直れる気がします。

成功に必要なのって、失敗に対する寛容さだと思っているんです。挑戦する人は歳を取っても挑戦しますし、一度失敗しても大したことないってまた挑戦できることが大事なのかもしれないですね。


伝え続けることが共感を生む

―FiNANCiEは、プロジェクトベースではなくその人自身を応援するというSNSなのですが、もし高橋さんがヒーロー(=夢を持つ人)として挑戦するとしたら、どんなことにチャレンジしたいですか?

私が取り組みたいのは、不老長寿の研究と事業です。アメリカでは不老不死に特化したファンドもあるのですが、長寿の国である日本にはまだ無い。国の研究費が少ないのですが、こういう研究はすぐにお金にならないので、アメリカでもGoogleなどの大きな企業しかスポンサーになれないんです。
でも多くの国の中で最初に高齢に関する問題に直面するのが日本です。それを世界で一番最初にサイエンスの力で解決して、他の国が高齢化問題に入る時にそのノウハウを輸出できたらいいなと思っています。

―誰かに応援してもらうためにはその夢への共感が必要だと思います。同じ景色を見たいと思ってもらうためには、どう振る舞っていけばいいと思いますか?

私たちが目指す未来にはこういう世界があります、というのをきちんと発信していくことや、そこに参加してもらうことにどれだけの価値があるかということ、新しい発展を見せることじゃないでしょうか。ユーグレナという会社は一部上場企業ですけど、一般の個人投資家の方が株主にとても多くて。投機目的で買ってくださる方もいるんですけど、夢を応援したいと言ってくださる方がとても多いんです。

―多くの方々がすでに共感してくださっているということですね。

世界にある環境問題・食料問題に対してまさに今挑戦していて、自分たちが挑戦することが新しい発展に繋がるということを、すごく発信しているからだと思います。世界には色々な課題があって、ひとつ解決すればまた新しい課題が生まれてくる。課題がなくなることは一生ないですが、じゃあ解決しなくていいのかというとそういうわけではなく、どんな問題でも新しいテクノロジーによって解決していける自分たちという体験を共有するということが、人類にとっての希望というか、仕事だと思うんです。

ーなるほど、体験を共有することで一緒に進んでいけるということですね?

人は体験によってしか理解ができないんです。初めて宇宙に行ったガガーリンが「人類にとっての最大の幸福は何か?」という問いに「新しい発展に参加することだ」と答えた言葉が私、すごく好きなんです。ワールドカップとかオリンピックとか、自分たちの生活には何も関係がないのに皆すごく応援しますよね。それは新しいチャレンジや記録を打ち立てる瞬間に自分も参加できているという事で、すごく幸福度が高いと思うんです。だからこそ、挑戦する側としては、そのリーダーになる人が発信していくことが大事だと思います。

―高橋さんが発信し続けたことによって、変わったものはありますか?

最近ではテレビで取り上げていただいたことへの反響が大きくて。「何をやっているのか知っていたら、もっと早くから応援していたのに」と言われることが増えました。最初は正しいことを言っていれば伝わると思っていたのに、それだけだと足りないと気がついて。でもこんなに面白い未来が待っているよ、とか、次の世代に自分たちが残せるものがあるかもしれないっ、という話を色々なところでするように切り替えたんです。
ゲノムの研究をするということは、たくさんの人のデータが無いと発展しない。多くの人々を巻き込めるように、取り組んでいるところです。

―この5年で、ご自身の事業に関して変わってきたなと実感できることはありますか?

個人向けの遺伝子解析のサービスでいうと、5年前は「遺伝子ってなに?」という環境であったのが「聞いたことはある」という人が増えたなと思っています。アメリカでも同様にユーザーがほとんどいなかったのですが、ここ1~2年で一気に市場が増えているんです。多くの人々が遺伝子解析をすることでご自身の病気のリスクを正しく知りながら、健康に生きていく。
そしてそれらのデータを活用して、また多くの人々の役に立つ研究を行なっていく。そのためにも、多くの人を巻き込みながら、一つひとつ取り組んでいきたいですね。

―ありがとうございました。では最後に、夢にむかって頑張る人に向けてのメッセージをお願いします。

夢ってもっと大きな声で言ってもいいのになってすごく思うんです。口に出して達成できなかったら恥ずかしいとか、バカにされたら恥ずかしいとか、そういう風潮があると思っていて。でも言った方が絶対にいい。自分もその夢に向かっていくし、周りの人も巻き込める。

できなかったら恥ずかしいというのもわかるんですけど、結局人って生きて死ぬので、そこに立ち返るとそんなに大した話じゃないと思うんです。視野を広くも狭くもという話でもあるんですけど、失敗は宇宙レベルで考えたら大したことないです。夢は大きな声で発信しながら、進んでいくのがいいと思いますよ。

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取材・編集 : 柴田佐世子 , 柴山由香
撮影 : 池田実加


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『フィナンシェ・ヒーローズ・トーク』開催決定! 

FiNANCiEのファウンダーである國光宏尚氏、ゲストのヒューマンキャピタリストとFiNANCiEで活動するオーナーが出演するトーク番組がはじまります!

第1弾は國光氏、ヒューマンキャピタリスト けんすう氏、現役のオーナーとしてFiNANCiEで活動中のストーム久保氏をお招きし、“コミュニティマネジメント講座”というテーマでトークをしていただきます。

★番組放送日時
2019年6月6日(木)21:30~22:30
※放送時間は前後する場合がございます。

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今後は毎回異なるテーマを掲げ、隔週でお届けする予定です。ぜひご覧ください。(詳しくはこちら

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