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第二幕 2-3 経済的自立に踏み出すための5つのレディネス

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①情熱

 経済的自立に踏み出すために、一番重要なものは《①情熱》である。経済的自立は手段であり、目的はあなたがやりたいこと、あなたが成し遂げたいことをやれるようにすることである。

 ここで少し考えてほしい。
「もしお金が充分あり、お金のために働く必要がなかったら、あなたは何をするか?」

 ビーチで昼からビールを飲みたい、朝から夜までずっとゲームしていたい、韓国ドラマをぶっとおしで全部見たい、資格の勉強をしたい、1日中寝ていたい……
 いろいろ出てくると思うが、ここに挙げたようなことは今でもやろうと思えばできることである。というか絶対できるから、ただやればいい。

 こういうことではなく、もっと自分の心の声を聞いてほしい
「朝起きるのが楽しくてしょうがない。早く自分がやりたいことをやりたくて、目覚まし時計より早く起きてしまう。そして気づけば1日が終わっている。寝るときは朝起きたときよりもっと興奮していて、早く明日の朝にならないかなと思いながら眠りにつく」

 今の自分はどうなのか? 自分が何をやっていたら、このような毎日を感じられるか?
 そういう世界に行きたいと強く想う、その情熱が経済的自立を実現する強い原動力となる。

②行動 

 一方、情熱は重要だが、情熱だけでは何も起こらない。冷静な《②行動》を併せて起こす必要がある。
 情熱から出てくるものは、一般的には曖昧な概念であるケースが多い。それを概念のままにしておくと、何も行動ができない。まずは、それを具体的なことが考えられる粒度に分解する必要がある。

 その分解した中で今すぐできそうなことがあれば、具体的な行動に移す。そしてその行動から学びを得ていく。ここで大切なことは、もともとの情熱を忘れないことである。往々にして、分解して物事を考えると、その分解したものが目的化して、そもそも何のためにやっていたのかがわからなくなることがある。何を自分がやりたいか、成し遂げたいか、そのために具体的な行動をしていることを忘れてはいけない。

 具体例を挙げる。

 A男は、量子コンピューティングの魅力に取りつかれ、これがあれば世の中を大きく変えられることを確信している。世の中を変えるためには、まずは人々の認識を変える必要があり、その観点で、量子コンピューティングをわかりやすく世の中の人に理解してもらうこと、それを自分のライフワークとしてやろうと決心した。
 さっそくこの情熱を分解して、「プロモーション手段」「自分ブランディング」「企業との連携」の3つに分け、具体的に考えはじめた。
 その中ですぐできることとして、「You Tuberになろう!」と決意した。そして、You Tubeで量子コンピューティングのチャネルをつくって、世の中がどう変わるのかということを、小学4年生にもわかるように解説した。
 いかにも世間受けしなさそうなコンテンツだが、なぜか女子高生の間でバズり、それを起爆剤にチャネルの登録者数が短期間で激増した。
「You Tubeってこんな儲かるのか!」
 いい気になったA男は、『あなたもYou Tuberになって大儲けする10のステップ』という本を出し、これも売れなそうだがなぜか大ヒットして、さらにたくさんお金も稼げた。めでたしめでたし。(この話は、フィクションです)

A男の成り上がり物語

「A男、お前はそもそも何をやりたかったんだ。お前の情熱は何だったんだ」
 このようなパターンに陥らないように、情熱から行動につなげるときには注意が必要ということである。

③労働収入

 情熱があり、それに基づいて行動している。経済的自立に向けてそれで充分かというと、残念ながら充分ではない。情熱とか行動のような、ふわっとした話をしていると、なんとなくいけそうな感じがしてくるが、そもそも経済的自立を実現するためにはお金を増やさないといけない。ここはごく現実的な話である。
 お金を増やすための手段は、《③労働による収入》を増やすことと、《④資産による収入》を増やすことである。

 労働による収入を増やすためにはKKD、すなわち「勘」と「経験」と「度胸」に支配されているビジネスの世界で、いかにのし上がっていくか、というのが最も重要な論点であると私は捉えている。
 これについては、業種や職種は関係ない。KKDである限り、新参者はいつまでたっても上にはいけない。なぜなら、経験ではこれまでいる人に勝てないからである。

 「あなたの言ってることはわかるけど、我々の経験では、こっちのほうが正しいよ(=経験もないくせに偉そうなこと言うな!)」といった世界観である。こういう世界に立ち向かっていくためにはどうしたいいか、ということを自分で深く考える必要がある。考えないと、KKDの世界に流されて、あなたもいつも間にかKKDの住民になり、経済的自立は遠のいていく。

④資産収入

 資産による収入を増やすためには、端的には投資を頑張ることである。ただ、ここは人間の本能と本気で戦う覚悟が必要となる。
 損失回避性しかり、焦り本能しかりである。ぼーっとしていると本能に支配され、無気力になって何もしないか、勝てる見込みの小さい博打に手を出すかのいずれかになってしまう。ぼーっとせずに自分の頭で考えることが大切ではあるが、ここではその前提としての統計の理解が死ぬほど重要である。
 
 喫茶店で仕事をしていると、投資を売り込もうとしている人がお客さまに対して、必死に説明しているシーンにぶつかることがある。

投資を売りたい人「この商品、利回り10%ですよ! アインシュタインも言ってる複利の魔術で10年持ってると、2.6倍になりますよ!」
手ごわいお客さま「そうなんですね。でもリスクもありますよね」
投資を売りたい人「リスクは大丈夫ですよ。だいたい毎年10%付近の利回り出てますから」
手ごわいお客さま「利回りでなく商品自体の過去20年の標準偏差って、どれくらいですか? さらに変動係数は他の商品と比較してどれくらいですか?」
投資を売りたい人「えっ、標準偏差、変動何?……あー、素人はよく言うんですが、そういう統計的な数字とかは、気にしないほうがいいですよ。投資のプロはあまりそういうこと気にしないですから。とにかく10年で2.6倍ですよ。他にこんな商品ありますか?」

喫茶店で投資商品を売りたい人

 これは極端な例だが、類した話をよく耳にすることがあり、聞いているととても悲しくなる。もっとみんなで統計を勉強しよう! そして正しく資産による収入を増やそう!

 《①情熱》があり、それに基づいて《②行動》しています。《③労働による収入》と《④資産による収入》を着実に増やしている。

⑤ストーリー

 最後に必要なのは、これらを総合して全体を貫く《⑤ストーリー》である。ストーリーの重要性については論を俟たない––––人間、ストーリーを食べて生きている。

 ストーリーを創るとなぜか、そのとおり物事が進んでいくといった不思議な現象を、私はビジネスの現場で経験してきた。経験したのは、データドリブン経営 への変革という、何やら小難しく、かつ多くの先行企業がなかなか前に進めず、ほぼみんな撃沈しているテーマであった。
 やったのは、最初にお客さまと一緒に変革のストーリーを創ったことである。そして、それを日々一緒に見続けたことである。結果、なぜかそのストーリーに沿って変革が進んでいった。
 
 このとき感じたのは、ストーリーには人間の無意識の深層を動かす効果があるのではないか、ということである。明確な道のりを常に示し、関係者で共通理解し、それが無意識の深層の中で、意識を超えた部分で変革が実現されていく。これが私が経験したことである。

 経済的自立については、誰もあなたのストーリーを創ってくれない。他ならぬ自分で自分のストーリーを創る。このストーリーこそが、あなたの経済的自立の予言の書である。

 ここまでの話をまとめ、経済的自立の5つのレディネスを図にしたのが、以下である。

 経済的自立の5つのレディネス

 この後、以下の順番でレディネスを整え、最終的にあなたの経済的自立の予言の書を完成させる。

1.情熱、行動、労働収入、資産収入に関する現状を把握する。
2.情熱、行動、労働収入、資産収入のレディネスをどう向上したらいいかを理解する。
3.20年カレンダーと経済的自立の実現可能性をふまえ、あなたの経済的自立の予言書の書を作成する。

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