2017タイトル

『新春スペシャルドラマ 富士ファミリー2017』(2017年 NHK総合) 脚本:木皿泉  主演:片桐はいり 薬師丸ひろ子 小泉今日子

〈あらすじ〉
2016年に放送された「富士ファミリー」の続編。
 長女の鷹子が結婚して家を出た小国家。現在は故ナスミの元夫の日出男、日出男の再婚相手の若妻・愛子と産まれたばかりの娘の光、新しいアルバイトの“ぷりお”が加わって笑子ばあさんと同居している。
 ある日、鷹子がふと目にした雑誌に中学校の同級生の“きーちゃん”こと遠山霧子が世界的な予言者キティ・トーヤマとして紹介されているのを見つける。きーちゃんを思い出して懐かしくなった鷹子は中学時代の日記を探し出すのだが、そこには35年前にきーちゃんが鷹子に告げた不吉な予言が書かれていた。
 一方、ユーレイのナスミは笑子に「生まれ変わることにした」と言いに来る。生まれ変わった時にナスミだとわかるように2人が決めた合い言葉は「おはぎちょうだい」。その「おはぎちょうだい」という言葉が、いろいろな場面で生まれ変わりの魔法をかけてゆく。

《感想》
 笑子ばあちゃんが、じきに生まれ変わって来るナスミのために「ナスミの分」と書いておはぎを1パック取り分けておくシーンがすごく好きです。他の木皿作品にも「〜の分」と書いて食べ物を取っておく場面が出て来てくるのですが、そのさりげないシーンになぜかじんとしてしまうのは「〜の分」という言葉の奥には「あなたはここにいる人なんだよ」という意味が含まれているようで「あぁ、ちゃんと私はみんなの数に入っているんだな」というような安心感があるからかもしれません。
 富士ファミリーで描かれるコミュニティでは、バラバラの年齢の人々が対等に会話をしているシーンが日常の風景としてよく出てくるのですが、その感じも「そこにいる全ての人がちゃんとコミュニティの数に入っているんだな」という感じがして、とても好きです。

 そして今回の作品では「呪いの言葉」と「魔法の言葉」いうことが一つのキーワードになっています。
 最近ではスピリチュアルブームの影響か「言霊」という言葉がごくごく普通の会話に出て来くるようになりましたが、言葉の力って「悪い言葉を使ったら悪いことが起こるから良い言葉だけを使おう」とかそういう単純な物ではなくて、大地が笑子ばあちゃんのことを「信じる」ことによって初めて「おはぎちょうだい」という言葉に魔法がかかるというような、“人とのつながり”とか“想い”とかによって生まれるものなのかなと思いました。

2014年に放送された同じく木皿泉さん脚本の『昨夜のカレー、明日のパン』に出演されていたメンバー(仲里依紗さん、鹿賀丈史さん、片桐はいりさん、ミムラさん、小倉一郎さん、筒井真理子さん、マキタスポーツさん)が再集結しているというのも木皿ファンにとっては嬉しいところです。

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