すいか

「すいか」(ドラマ)日本テレビ系列 2003年放送

「すいか」(ドラマ)日本テレビ系列 2003年放送 脚本:木皿泉

《あらすじ》
信用金庫のOL早川基子34歳。同期入社の女子社員はみんな寿退社してしまい、唯一残っていた馬場真理子も信金のお金3億円を横領して逃走してしまう。それをきっかけに、実家を飛び出して三軒茶屋のオンボロ下宿「ハピネス三茶」に引っ越してきた基子。「ハピネス三茶」には、基子が今まで出会ったことのない個性的な女性たちばかり住んでいた。

もう若くもなく昇進の見込みもないOLの、会社での居心地の悪さと理不尽な気持ち。
結婚の予定もなければ一人で生きていく覚悟もない独身女性の不安定さ。
そういう基子の気持ちが、放送当時まだ会社員だった私に痛いほどリアルに響いていました。
そしてこのドラマに出て来る女性一人一人がお互いに作用しながら、次第に自分の殻を破って行く様子がとても清々しくて、見終わるといつもじわじわと元気と勇気が湧いてくるのです。

「あたしみたいなのもいていいんですかね」という基子の問いに、教授がキッパリと言う「いてよし。」という言葉に、どれだけの人が救われたことでしょう。

「ずっとこのままでいたいけれど、このままではいられない」という、夏の終わりの寂しさを残しつつ物語は終わります。
「何事にもいつかは終わりが来る」ことを目の当たりにすることはとっても切ないことなのだけれど、でもこの視点を持って世界を見てみると、何気ない退屈な毎日もキラキラと輝いて見えるということを木皿泉さんの作品はいつも教えてくれます。

文庫版「すいか」のシナリオ本の巻末に10年後の「すいか」の物語が載っています。
それを初めて読んだ時、なんでもないシーンで涙があふれて来ました。
それは、悲しいとか感動とかいう種類の涙ではなくて、「ハピネス三茶のみんなの生活はずっと続いていたのだ」という嬉しい涙。久しぶりに再会した友人たちに「(よくも悪くも)変わってないなぁ」と、くすっと呆れるという感じでしょうか。それほどまでに、この作品の登場人物たちは私の心にずっと生き続けているのです。

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