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津田沼パルコ閉店

 2023年2月28日、津田沼パルコはその歴史に幕を閉じた。ほんとうに代え難い時間だった。

 パルコの最終日を見届けられたのは全くの偶然だった。

 ぼくは研究室の机に置くカプセルトイを探すために、モリシア津田沼へ友人と向かっていた。

 ふと友人が
「そういえば津田沼パルコ今日が閉店らしいよ」
 という。
「そうだ、今日だった。最後だし見届けてみたいな。閉店セールとかもあるかもだしね。」

 ぼくは津田沼パルコが今月で最後だということは知っていたが、今日がその最終日だとは思い至らなかった。これは行くしかあるまい。

 というわけで彼のミラクルリマインドにより、はからずも津田沼パルコの最後の日を見届けることが叶ったのだ。

 パルコ前の歩道橋にはたくさんの人々が集まり、めいめいが写真を撮ったり、思い出話に花を咲かせている。壁面にはプロジェクションマッピングでハートが映し出されていた。別れの悲しみと、特別な瞬間を見届けているという高揚感が津田沼駅前を鮮やかに彩り、ぼくはそれだけで胸がいっぱいになった。

 中に入ると、たくさんの人々が最後のパルコでのショッピングを楽しんでいた。親子や友達、カップル。みんながそれぞれのしかたでパルコの最後の一日を刻みつけているようだった。

 ふとぼくの目に留まったのは、二眼レフの形の缶に入ったチョコレートだった。レトロで美しく、長く遺しておける。今日の記念にぴったりだ。すぐさま購入。いい思い出の品になるだろう。

 エスカレーターを上がって楽器店へ。ギターコーナーで、仲のいい友人みんなで過ごした日、ギター演奏に合わせて歌った思い出を語りだす。この場で思い出を語ることで大学生活の終わりと別れを強く意識させられる。

 階段にはパルコの歴代広告が地下2階から地上7階までずらりと並んでいた。すべてがその時代のトレンドの最先端だ。当時はただの広告だったろうが、全てを並べるとそれだけでたくさんのことが見えてくる。あるモチーフが好まれる時代背景、人々と必ず目が合う強い視線というこだわり、アートとしての純粋な楽しさ。集めるという行為が描き出す共通点と相違点が知的好奇心を刺激する。コレクションの力だ。

 荒俣宏と鹿島茂、東浩紀のゲンロンカフェでの対談を思い出した。集めることが描き出す思いもつかない世界。全て集めることで歴史性が紡ぎ出されてくる。

 パルコの歴史。アートの歴史。カルチャーの歴史。ぼくはアートに全く詳しくないけれど、大きな時代の流れを感じ取ることだけはできた。それだけでパルコの最後を見届けた意味があった。

 さよなら。パルコ。大学生の短い間だけでしたが、お世話になりました。

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