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『世界の終わりから』/映画感想文

あまり話題になっていませんが、紀里谷監督の引退作品。

1. あらすじ

「あと少しで世界は終わる。でもキミは救世主だから世界を救ってくれ!」
と意味不明の難題を突き付けられた女子高校生が、自暴自棄になりつつも過去と現在を行き来して世界を救う途を探す。

2. 点数

74点

「映像かっこいいし、全然悪くないじゃん」と思うのだが、それ以上にグッとくるものがない。半年後に記憶に残っているかとなると極めて怪しい。
どう評価していいか難しいけど、パンチはきいている。

3. 感想

紀里谷和明という超絶色男

本作とは関係ない思い出話から始まるがご容赦いただきたい。

彼の名前を初めて知ったのは、宇多田ヒカルとの電撃結婚のときだ。
おそらくほとんどの人がそうだろう。

ゲジゲジ眉毛の天才娘が名実ともに歌姫になろうとしていた時期、突如としてPV監督の映像クリエイターとの結婚を発表。

「まだまだこれからなのに大丈夫か? 日本の、いや世界の歌姫を潰すんじゃないぞ!」

そんな生意気な感情を持ちつつダンナの写真を見る。


「うお、おぅぅ… 」

圧倒された。
端正な顔はもちろんなのだが、色気がとにかく溢れている。
色気が彼の毛穴すべてから発出され、パソコンのモニターを透過してきた。
鼻の奥に甘美な香りが広がった。いやこれは嘘。


負けた。
というか惚れた。
男だけど惚れた。抱かれるならこういう男がいいと。

こんな気持ちになったのは、金城武以来2回目(知らんがな)。

しかも映像は独創的で、『FINAL DISTANCE』、『traveling』などのPVではハッとするような妻の美しいカットを不意に差し込んでくる。つまり才能も溢れている。アメリカ育ちだし。
そりゃ歌姫も惚れるわ。

彼に対するイメージはいまも基本的に変わっていない。神に愛された男というべきか。
憧れはもちろんあるが、かっこいい!こうなりたい!とは少し違う気もする。

「そんなんずるいわー」
がリアルな彼への気持ちである。

色男、映画監督になる

こうして芸能界での地位と知名度を得た彼は、映画監督となった。
『CASSHERN』、『GOEMON』が代表作。

映画ファンからは酷評され、もはやネタ枠になりつつあるが、私の評価は違った。
なかなか良作じゃないかと。
じゃあ感想は?と聞かれると、

ない。出てこない。

・近未来的な新解釈だったよね
・映像と衣装がかっこいい

こんなアホみたいな薄っぺらい感想しか出てこない。


これが個人的な紀里谷作品の特徴だ。
視覚的なインパクトとスタイリッシュさで押し込んでくるので、鑑賞時には心地よさを与えてくれる。
しかしストーリーに不備があるのか、しばらく経つと記憶に残っていない。煙のように消え去っている。

本作もこの特徴を受け継いでしまった。

紀里谷味あふれる映像

冒頭は合戦シーン。
白黒だけどなんか乾いてるような、ジャリついてる空気感。

これこれー!おしゃれなやつ!

紀里谷ワールドに引き込まれ、テンションが上がる。抱いてくれ。

現代パートはカラーで展開され、特別にキレッキレというわけではないが、カットまわしに違和感なし。
やっぱこの人、才能あるわ。

伊東蒼という才能

『さがす』で度肝を抜かれた女優さん。今作でもさすがの演技力で期待を裏切らない。

終始泣きながら質問を繰り返し、衣装代ケチられたの?って同情するくらいずっとセーラー服を着てるけど、そんな縛りプレイにも負けずお見事。

美人ながらもエロさを感じさせず、作品に集中させてくれるのも魅力。

既視感あるストーリーの進め方

本作は「終末救世主もの」というべきか、多くの作品で触れられてきたようなストーリーライン。

マトリックス、エブエブ、ジブリ系、新海誠系。
パッと思いつくだけでもメガヒット作がならぶ。
その中で独自色を打ち出すのはかなりきつい作業に違いない。
(ちなみに、夏木マリ=湯婆婆説は監督本人が否定)

上述のように、色男監督の力量によって映像は十分にスタイリッシュ。
ただそれ以上の積み上げは感じられなかった。
端的に言えば、①話のつなぎ合わせの雑さ、②セリフ回しの臭さが気になった。

①についてはそもそもSFのため、構造上どこかで矛盾が生じてしまう。
なのでまぁしょうがないかなと。
マトリックスだってわかったようなわからないような話だし。

なので問題は②にある。

少年マンガのような脚本

闇落ちさせようとしてくる北村一輝は、
「この世界は狂っている!」、「現実と夢、区別することなどできるのか?」

終盤に希望が見えてきた主人公は、
「私は、、愛されていた、、!(ハアッ)」


いやー、わざわざ役者に言わせることじゃないのでは。
むず痒さを感じたのは私だけではないはず。

臭いというか、少年マンガ的というか。
でも臭いものに真正面から挑むというのは色男監督のよさなのかもしれない。


総じて良くも悪くも紀里谷作品といった感じ。
来年になると忘れてしまってそうだ。
でも嫌いにはなれないんだよな。スルメというよりは珍味。

本作で映画監督は引退らしい。ひとまずお疲れ様でした。
もし将来映画を撮ってくれたときは、懲りずにまた映画館に抱かれに行くと思います。

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