Bounty Dog【Science.Not,Magic】31-32

31

「あのな!オレ、お前と別れてから、実験に実験を重ねてだな!空気からは未だ反応出来ねえけど、兄貴の十八番の、物体を粉化させる操作術ならオレもマスターしたぜ!」
 カイ・ディスペルは寝巻きから黄色いローブのようなトップスにデニム半ズボン・ショートブーツの普段着に着替えており、白い布製のメッセンジャーバッグを肩に掛けていた。旅立ちの準備を整えてから行動していた人間の少年は、懐中電灯の光を前方に当てながら、救助した”友達”を引き連れて国際保護組織・亜人課支部から離れていく。
 ローグの子供は左足首に付いた金色の金具以外を全て”粉砕”して貰って自由の身になっていた。ダボダボの黒い患者衣のような服を引き摺りながら友達を追い掛ける鼠の亜人に、先導する人間の少年は半ば独り言のように喋り続ける。
「鉄とスチールと硝子は、幾らでも粉にしてやる。更に!更に!オレは炭素とプラスチックと金と銀も粉に出来るようになったが、兄貴には未だ内緒にしていてーー」
「ねーねー、カイ。ボクが教えた水の原子の操作術は?」
 ローグの子供とカイが同時に立ち止まった。懐中電灯の光を鼠の亜人の顔に向けた人間の少年は、困り顔をしている友達の瞳孔が濁った赤い大きな目を暫く見つめてから、真顔で言った。
「あー……すまん。あのスーパーハイパーウルトラ格好良い氷出す奴な、術式を忘れちまった」
「え!?ええええええ!?ええええええええええええええええ!!カイ!酷い!!」
 ローグの子供が驚愕して泣き喚き出した。カイは友達の口を押さえて強引に黙らせると、懐中電灯の光を頼りに、仲間を1人得た状態で『原子の旅』第2幕を開始した。

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