Bounty Dog【Science.Not,Magic】30

30

(最初からヒュウラの邪魔をしてはいけないという事?)
(……御意。響きが美しい初めだけで良い。……だ)
(7体は、必ず死ぬって決まっているのね?)
(御意。そうだ。1体は俺の行動で生き物が変わる……だ。……そうか。
 名は教えない。生き物達に影響が出てしまうからな。次にビリビリバギュドゴーンを受けたら、俺にも喋れなくなる…………何とも思わない)

 カイ・ディスペルは、唯1人だけ支部の外に居た。真夜中に響き渡った防犯ブザーで飛び起きたが、見えない何かに導かれたかのように思い立ち、大人の人間達と猫の亜人を追い掛けずに、支部から抜け出して外壁を伝いながら移動していた。
 中から聞こえる人間達と狼と猫の騒めき声を頼りに、地下室の真上に位置する場所の外壁まで辿り着く。カイは地面を見下ろしてから、壁を見た。壁はコンクリート製、地面は草が絨毯のように生えている赤寄りの黒土だった。
 カイは非力な人間の子供だ。地下室の壁を掘り出すには、深い穴を掘らなければいけない。更に頑丈なコンクリートの壁にも穴を開けないと、外から地下室には侵入出来ない。
 地面を掘る道具は持っていない。地面を掘り続ける体力も無い。だが彼は万能の道具を10個も持っていた。
 手の指である。

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