Bounty Dog 【清稜風月】262

262

 睦月・スミヨシには、幼馴染が1体と2人居る。亜人の幼馴染は特殊な仲であるが、人間の幼馴染とも物心が付く前からの部族同士の付き合いで、友という枠には嵌っているようで嵌って無いようなモノであり、内の1人とは自由に会う会わないの選択が大人になっても殆ど出来ない”腐れ縁”の間柄だった。
 一方で、もう1人とは自由に会う会わないの選択がお互いに出来る。今の相手は己よりも遥かに権力を持っている人間だが、現在も絆が変わらず、頼み事を容易に引き受けてくれる有り難い存在だった。”あいつ”とは真逆である。もし己の脳内にある記憶の湖から出てきても、聖人として確実に具現化されるだろう。
 日雨は相手を”もーちゃん”と呼んでいる。睦月は現在、抱えていた”其れ”をもーちゃんに渡していた。もーちゃんは睦月が呼んだ訳では無く、”其れ”が心配だったから仕事の合間に来てくれたらしい。居場所も容易に分かったそうだ。もーちゃんも”心眼”が使えるからだった。
 睦月の聖人もーちゃんは、真の聖人は決して行わない部族の伝統業務で多忙だった。山の端で待機させている里の人間達に”其れ”を預からせておくと言ってから、真顔で睦月に忠告してきた。
「何時かは来ると思うとりましたが、運命(さだめ)は唐突。どうか炎(ほむら)に御用心を」

 此の炎(ほむら)は、殴り消したく無かった。

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