Bounty Dog 【アグダード戦争】121-123

何かに造られて大勢が通っている道では無い場所の方が、遥かに近道で安全だったりする。通れる実力があれば。

121

「あぎゃああ、滅茶苦茶大変だったでござんす!!何もお買い得品が買えない辛い終わり方になってしまったでござんすが、ああたのお陰であっしの用事も終わったでやんす。お犬さんに感謝感激!持ってけドロボー大特価セールをこれから始めたいでそうろう!!」
「要らん」
 ヒュウラはモグラの亜人コルドウに担がれた状態で、胡座を掻いて座りながらアジトに向かって移動していた。モグラに返事する。元気が無かった。
 身体的に痛みで辛かったのもある。両足と肩、腰と背中の数カ所を銃で撃たれていて、殆ど身動きが取れなくなっていた。だが精神的な辛さの方が大きかった。
 狩人のほぼ全てが”宝石になる目を加工する為に”狙う首を、あの人間の男は一度も狙わなかったが、己を「気に入っている」と言い、己の主人になりたがっていたあの男は、数十分前に死んだ。自分で自分を撃ち殺して死んだが、己が男から注意を逸らしてしまっている間、ミスをして殺したようなものだった。
 男は己がいる紛争地帯アグダードの独裁者の1人だったが、ヒュウラも理解してやりたいと思うような強い闇を纏っていた男だった。理解する為に捕獲したかったのに何も分からないまま死なせてしまった事が、ショックで堪らなかった。
 両太腿に強い痛みが戻って非常に辛いが、モグラの掘る土山から、ヒュウラは立ち上がった。今、己とコルドウは崖の上にある大きな橋の一角にいる。
 故カスタバラクが亜人を使って作った”生物兵器”を運搬する為に造らせていた、建設途中の鉄道だった。

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