Bounty Dog 【清稜風月】257-258

257

「音楽というモノは良いよね。自然が奏でて作る魂の洗濯場も、人間が楽器を奏でて作る、涙あり感動ありの魂の大冒険場も」
 其の人間は、突然言ってきた。言葉を聞き取った存在が首を傾げると、人間は機嫌良く言葉を続けた。
「私も音楽が好きだ。此の国の出入り口で披露されていた『和楽器ロック』は、録音して持ち帰りたいくらい気に入った。だけどあのハイスピードのメロディを鳴らす最適なモノは西洋の電子楽器。広場で披露されていたのは軽音のロックだったが、ハードロックを奏でるならやはり三味線と琴と太鼓よりも、エレキギターとベースとドラムで鳴らすべきだ」
 相手は、傾けた首を正面にもどした。人間の”綺麗な”髪が山風に靡く。金色の太陽の光を浴びてキラキラ光り輝く明度と彩度が高い髪を見て相手の瞳もキラキラ輝くと、音楽が鳴り響いた。至極、美しい”自然”の音色。
「純粋な物は、混じり物よりも遥かに強い。でも混じり物も、純粋な物より遥かに驚異的なんだ」
 羽音を鳴らした櫻國固有種の虫の亜人に、人間は微笑みながら告げた。亜人の背後に、毒粉の洞窟が大きく口を開けている。
 人間の背後に、別の人間が意識を失った状態で座っている。

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