Bounty Dog 【清稜風月】238-239

238

 生涯、幼馴染や子供の頃に親しくなった存在と縁が切れずに最期まで”友”として深く関り合いながら命の時間を終わらせる事が出来る存在は、極めて少ない。大抵の存在は時の経過と共に、繋がり合っていた縁の糸が切れる。縁という名の糸は極めて脆い。些細な出来事がキッカケで切り落とし、切り落とされる。運命が切る事もある。死別がそのひとつである。
 友と友が繋がり合う縁という名の糸は、余りにも脆く切れやすい。だが切りようが無い程に縺れに縺れて強固になった糸で繋がり合っている存在達も居る。
 睦月は縺れに縺れた”腐れ縁”の糸で繋がっている、己と同じ櫻國出身の人間の名を呼び捨てで呼んだ。未だ夢の中を彷徨っている。彼が体に取り込んだ麻酔液は強力だった。睦月が此の日、自力で起きてきたのは、全てが終わりかけている頃だった。
 彼の意識も今、山の一角に居た。10歳程の幼い頃に戻り、桃色の着物を着て同じ色の髪と目を持っている虫の亜人の少女が少し離れた場所にある道の右側に立ち、燃えるように真っ赤な髪と目を持つ人間の男児が少女の左隣に立って、己に向かって声を掛けてくる。
(早く来い。置いていくぞ、むつ)
(むっちゃん!早く、早く、急いでー!あー君は、せっかちさんだよ!!)
 急いでいた。直ぐ行くから待っていろと赤毛の男児に向かって喚きながら、2人の幼馴染の元に着く為に、急いで走る。
 だが現実の、23歳の睦月は微塵も動かずに寝ていた。

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