Bounty Dog 【清稜風月】152

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 睦月の頭の中で今だに左右に揺れている手の平よりも小さな縮緬赤忍者の如く、小柄で身軽な”馬鹿犬”は指示完全無視で超人技を軽々としてきた。石垣を蹴り一撃で叩き壊した後にハイジャンプ1回でカンバヤシ邸の平屋の屋根に登るなり、屋根の端から無感情の顔を出して睦月を見下げてくる。頭部に出来ている大きなタンコブに、人間と9割見た目が同じである犬科の亜人の背から降りた東洋人のような見た目の西洋人の保護官が、西洋のチューブ形塗り薬をポケットから取り出して塗ってやっていた。
 遥か遠い場所から己とコノハ、そして己を仏頂面で見下げてきている”馬鹿犬”を犬が身に付けている首輪を通して遠隔援護すると言ってきたシルフィという西洋人は、日雨の種『麗音蜻蛉』よりも生息数が少なく絶滅寸前らしい亜人の1体こと”馬鹿犬”ヒュウラに己がタンコブを膨らませる程に強く頭を殴っても一言も叱咤して来ずに、日雨の家を出てから今まで沈黙したままだった。

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