Guilty Braves Truth 2:谷間の町ソーラ/魔導戦争が遺したモノ【2−3】

2-3

 シャッターの裏側は、埃の雪原だった。広い一軒家の高い天井から糸屑のようなハウスダストが舞い上がっては降り落ちていく。  
一行は周囲にあるものの方に目を奪われていた。無数の分厚い本がぎっしりと詰まった棚が、壁一面を覆っている。
 背の低い眼鏡の男は、上機嫌に鼻歌を歌いながら、身体を時々小さく振って、積もった埃を払い落とす。頭も肩も灰色の塵が乗っているレナとトカライはそれぞれ両方とも眉間に皺を寄せると、口を尖らせて文句を言った。
「いとも簡単に侵入出来るとか、つまらないわ」
「のだのだ、滅茶苦茶つまらないのだ」
「まあまあ。流星号さんを平和に返して貰いましょう」
 カマックは無言で男の背を追いかける。赤紫と青紫のにグラデーションが掛かった、髪と同じ独特の色の目は怒りで釣り上がっている。メロンは手を後ろに回して組むと、少年の後を歩きながら、壁の本棚を興味津々に眺めた。
「わあー。なんだか難しそうな本がいっぱいですね」
「今はそれよりも流星号!どこ行くんだよ、あんた」
「まあまあ、慌てず焦らず付いてきてよ」
 振り返った顔に付く眼鏡の奥の目を三日月形にして、男はカマックに笑い掛けると、視線を前方に戻して本の山の前に立ち止まる。大量の革表紙の本達が開いた状態で積み上がっている異様な知識の山を、男は無造作に崩していくと、
 カマックのオープンカーが、奥の床の上に停まっていた。

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