Bounty Dog 【アグダード戦争】278-279

278

 モグラの亜人・コルドウのミディールは、全く光が無い闇の空間を自由自在に走り回る。目の代わりに目から出す特殊な超音波が周囲の物に当たって跳ね返り、己に戻ってくる事で障害物を認識していた。これは洞窟等で暮らしている蝙蝠が持つモノと同じような能力であるが、コルドウは更に超音波を当てた物体の色や形状を、闇の中ですらぼんやりとだが認識出来る。
 ミディールの居る側には、人間は1人も来なかった。親愛なる親びーん・ヒュウラが作ってくれた安全地帯の中で、子分モグラは親びーんに指示された”緑色の光が出ている扉”を探す。
 南側にある1つ目の扉を見つけた。モグラは闇の中でシシシシ笑いながら、独り言を呟く。
「早速見つけたでござんす。先ずは冬物のアウターを確保するでやんす!冬はアウターでね、ファッションほぼ決まるでそうろう!!」
 世界一硬い人工鉱石も難なく斬り刻む鋼鉄の爪が付いた両手の指をクネクネ動かした。指を少し開いて構えてから、独特の威嚇声を出す。
「キシャアアアアア!!親びーんのご命令でござんす!神輿を壊して、先ずこの売り場でアウターをカゴに入れちゃる!キシャアアアアア!!」
 右手で扉を強く引っ掻いた。扉に5本の筋が深く掘り込まれる。直ぐ様に左手で扉を強く引っ掻いた。1度目の攻撃で掘り込まれた筋と交差する部分が外れて、扉がバラバラに斬り壊された。
 たった2回の引っ掻き攻撃で金属扉を破壊した、物理攻撃力ならローグを超えているコルドウのミディールは、闇の奥底で大量の光の粒が点滅している、巨大な信号機械『ヒュウラの神輿』を発見した。
 ミディールは口角を大きく上げる。モグラの中で未だ生き続けている、闇に紛れて行う業務が本業だった人間の老男が宿主を含めて誰も聞く事が出来ない声を、モグラの中で呟いた。
(服は半額まで待て。私がナシューに教えた妨害電波の真の威力もだが、私自身も100カ国以上での重要機密機関施設の潜入諜報任務を、外国での諜報専属時代でしていたんだ。
 我が祖国の陸軍入隊試験以上のエグさを、私の息子を種扱いしたお礼として君に与えよう。覚悟したまえ、『死神の花』)

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