Bounty Dog 【清稜風月】111

過剰な憎しみと過剰な愛情は、執着という害になる。執着は無意識に膨れ上がり、膨れ上がり過ぎると己を含めてあらゆるモノを破壊して滅ぼす

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 次に会ったら絶対に始末する。仮に”会ちょ”が指輪用の宝石にあの化け犬の目が欲しいと言ってきたとしても、己は目を加工して回収せずに、苦しめに苦しめてから化け犬を惨殺してやりたかった。
 イヌナキ城での単独任務を亜人に邪魔された北西大陸の某国出身の少年は、緊急で呼んだとある人間の助けを借りて城を脱出した後、櫻國にある観光客用の医療施設で緊急手術を受けた。左胸の肋骨が2本折れた重傷だったので、本来は最低1ヶ月の入院が必要であった。だが少年は己の祖国から命を狙われている身である故に、大人しく療養して無防備になる訳にはいかなかった。
 親愛なる“会ちょ”こと己が現在所属している国際組織の雇い主に、本来命令されている任務である”脱走子供探し”を完全放棄している事を知られる訳にもいかない。葉桜が左右に生えている早朝の並木道をふらつきながら歩いている少年の今の服装は、下はデニムとスニーカーで変わらないが上の服は、医療用ガーゼと包帯が巻かれた小麦色の肌の上から灰色のフード付きパーカーを羽織り、左胸から患部である鳩尾部分までを右肩に向かって簡易式の黒い西洋鎧で覆ってから、フードが無いモスグリーンのマウンテンパーカーを被っていた。
 治療途中で病室を抜け出してきた為、脱走を勘付かれる前に早急に隠れ場所を探す必要があった。手紙を現地で無くしてしまったが、任務は馬鹿犬のせいで完全に失敗したと確信していた。
 少年は千切って一部が腕に付いたままになっている輸血器具のチューブと針を、力任せに引き抜いた。チューブに残っていた他の人間の血と腕から噴き出た己の血が混ざって桜の木と地面に飛び散る。直後に起きた酷い目眩に耐えながら道の半ばで暫く立ち止まっていると、
 人間が1人、前方からやってきた。

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