Bounty Dog 【清稜風月】178-179

178

 コノハ・スーヴェリア・E・サクラダは、山の一角で睦月・スミヨシの愛銃を見付けた。その銃は生きる為食べる為にする否応無しの動物撃ちでは無く、人間を撃ち殺す為に手に入れられて使われている。彼の銃は、別の人間達が人間殺しの為に使われるのを重々承知している上で、利益という金の為に作り出したエゴの産物の1つだった。
 睦月の対人用狙撃銃は、生まれてきた時に定められている『何かを撃ち抜く』という使命を行なっている。人間殺しに頻繁に使われていた。だが持ち主がその銃で人間を殺すのは幼馴染を守る為であり、普段は生きる為食べる為の動物撃ちに使っている。
 『霊』は人間が作った道具1つ1つにも宿っている。物が生まれた時に持っている使命を全うさせながら100年大事に使えば強力な守り神になると、櫻國では古より人間達の間で信じられてきた。西洋に住む多くの人間達が信じる『万物の神』は、一生の内で善を一定以上の成果を上げて行った存在に、来世で望み通りの幸福を与える。此の東洋の島国に住んでいる人間達は、神をそもそも信じていないか、星にある全ての存在に宿っている『八百万の神』を信じて崇めているかの何方かが多数だった。
 コノハの探し物は睦月の銃では無かった。探し物はこの場所に居ない。通信機を取り出して、液晶画面を見ながら赤い点の行方を探した。赤い点は2つあった。
 冥土に住む『万物の神』は死んだ魂に対して、大罪を犯した存在は魂を即座に消滅させ、罪を一定以上犯した存在と生涯で行うべき善の量が足りなかった存在も転生させずに地獄で永遠に苦痛を与える。『八百万の神』も罪を犯す存在に対して非常に厳しかった。
 物は使命を全うさせながら大事に扱えば守り神になる。だが、物に使命を一切させず杜撰に扱えば身から離しても物に宿っている『霊』が飛び出して”厄病神”になり、持ち主だった存在の中に宿って死ぬまで罰として不幸を与え続ける。

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