Bounty Dog 【清稜風月】144-145

144

 先ずポケットに入っている”アレ”を使って気を逸らしてから、渾身の力を込めた右ストレートパンチで1番右にいる人間を殴り飛ばす。そしてその横にいる人間も渾身の力を込めた左フックパンチで殴り飛ばし、周囲を阿鼻叫喚状態にさせた後に、襖に力の限り体当たりして奥に乱入する。もしくは、アレを使って気を逸らしてから1番左にいる人間を持ち上げて床に足で大穴を開け、持ち上げた黒服人間を穴に落とし、他の黒服人間達も纏めて穴に放り落とし、ドサクサに紛れて何時も煩いノウも煩いから穴に落として永遠に放置し、睦月はその場で一時的に放置して、襖をキックで諸々ごと破壊して乱入する。
 ヒュウラは仏頂面のまま、物陰に隠れて2通りの暴走作戦を頭の中で密かに計画していた。デルタ・コルクラートが此の場に居るか首輪越しに指示をしてきていた半年前の状況なら「速攻で辞めろ」と絶対に命令されていただろうと思う。だが今は己の頭の中に形成している順位表で頂点に君臨している主人から受けた指導による穏便な任務遂行よりも、その直ぐ下に置いている中東兵の準主人が何時も勘付いたら勝手にしていた『ガビーお暴れ式・敵勢全撃破超絶強引突破術』を採用して真似する事にした。

 ガビーは、ヒュウラの準主人が学生時代からの友で戦友でもある中東兵の人間に何時も呼ばれている渾名で、意味は中東語で『アホ』である。アホな人間の男が時折その場のノリだけで実行していた作戦潰しでしか無い愚行を真似する気満々になっている馬鹿犬を挟んで、共に人間である亜人の主人だった人間の姉が現上司である保護官の女と、別の亜人を13年保護している櫻國人の男は、亜人と真逆の『隠密式・敵勢全回避穏便突破術』の仕方を頭の中で其々練っていた。

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