Bounty Dog 【アグダード戦争】124-125

124

 軍曹達の”掃除”任務中にアジトで留守番していたヒュウラが独断で脱走してコルドウの保護任務と共に盛大な騒動を起こし、結果としてヒュウラが足を中心に重度の怪我をしたものの、無事にアジトに連れ戻されてから、あっという間に1週間が経った。
 その間に、定期的に行なわれているらしい”民間お掃除部隊”のアジトの引っ越しがされた。少し周囲が騒がしいものの、次のアジトは前の洞窟のような場所から、大きな大きな人間の家みたいな所になった。
 噂によると、今度のアジトはつい最近市場の爆弾テロに巻き込まれて粉砕死したイシュダヌの上客だったらしい変態気質の奴隷買いが住んでいた屋敷らしく、地下室が幾つかあったが、悍ましいしか感想が湧かない奴隷用の調教器具がどの部屋にも山のようにあったらしく、引っ越しついでに軍曹達が、保護官達にもリングやヒュウラにも中身を一切見せる事なく、全部本当のゴミとして袋に詰めて外で焼いて埋めて捨てていた。
 ついでに家の背後にある崖を崩して、家全体も半分以上土に埋めた。シルフィが部下達と作業をしていた朱色目に理由を尋ねると、カモフラージュらしい。土を被せられた衝撃で家の中が少々潰れたが、この屋敷型のアジトはこれまでのアジトで1番快適な場所だった。
 新しいアジトへの引っ越しが終わると、朱色目の黒布は後片付けを手伝っていたミトとシルフィに近付いて行った。両足を怪我しているヒュウラは、軍曹が呼んできてくれた中立派で信用出来るアグダードの民間の医者に亜人であると隠して診察されて、全治3ヶ月と診断された。両足にギプスが巻かれて真面に動けず、安静状態になっているヒュウラは完全に自力で外せないようシルフィに改造された首輪を付け、壁に寄り掛かって腕を組みながら、仏頂面で大の字に座って、3人の人間達の様子を眺める。
 繁々と観察を始めると、朱色目が先ずシルフィに話し掛けた。
「此処、コルドウの巣が近いので、外出する時は特に気を付けてくださいね」
「あら、良いわね。何時でも保護活動が出来るわ」
 白銀のショットガンを背負って木箱を持っているシルフィが、微笑みながら返事する。朱色目は急に目を緩めて笑顔になった。シルフィの横で雑巾を絞って床を拭いていたミトに向かってしゃがみ込むと、妙に温和な空気を出しながら話し掛けた。
「ミトちゃんも。気を付けてね」
「ええ、ありがとう」
 ヒュウラは、何故かは分からないが朱色目とミトが急激に仲良くなっていると察知した。呼び方と接し方が変わっている。幸せそうに笑い合っている2人を見ても、特に何も思わなかった。それよりも、心が壊れそうになっていたミトが凄く元気になっていたのが嬉しかった。

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