Bounty Dog 【アグダード戦争】80-82

80

 4階西エリアの端の部屋に、ヒュウラは辿り着いた。背負っているカスタバラクの護衛兵を、床に開いた穴の中に放り投げる。追いかけてきたもう1人の護衛兵がライフル銃で撃ってきた。3発連続で撃って、ヒュウラは全て身を捻って避ける。
 狩人との銃撃攻防戦は、保護官のミトと『世界生物保護連合』に保護されるまで、非常に高級な生物素材を持つ生き物であるヒュウラは日常茶飯事であり、生き残る為に身体が銃の攻撃に慣れきっていた。今は守るものが無い、”加工”する為の第一手段である首に刃物で斬撃を一切してこない事に疑問を感じつつ、仏頂面のまま、隙の無い動きで飛んでくる弾を避け続ける。
 兵がガスマスクを脱ぎ捨てた。浅黒い肌と白い髪に澄んだ鮮やかな色の目をしたアグダード現地人は、ライフル銃を連発で撃つ。ヒュウラは後ろに跳ね飛んで宙でバク転をしてから、兵士の背後に着地した。兵士の背を両手で強く押す。兵が持つ銃の口が火を吹いて、銃弾が部屋の壁にめり込んだ。驚愕しながら前のめりになった兵士を、ヒュウラは仏頂面で更に強く手で押す。勢い良く前に押されると、兵士は前方に空いている大きな穴の中に落とされた。
 ターゲット以外の人間達が階下に落ちる。ヒュウラはコルドウを迎えに最上階に行くまでに、3階にある4階に登る為の梯子を、4階から蹴り外して壊していた。最上階の人間達はコルドウが全滅させていたので、ターゲット以外は全て3階以下に集まっていると予測した。
 事実、そうだった。カスタバラクは2人の護衛兵以外の全員を、ヒュウラともう1体の亜人の捕獲に向かわせていた。この建物にはエレベーターも一応あるが、カスタバラク専用に設けているものであり、操作用のカードキーはカスタバラクだけが持っており、施設の兵士達は誰も所有していなかった。
 其処までは全く知らないものの、ヒュウラは感で、己が思っている通りの状態になっていると考えた。仏頂面のまま背後を振り向いて、ターゲットが来ていない事を確認すると、
 前に向き直して、自らも穴の中に飛び込んだ。4階から1階まで一気に落ちる。

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