Bounty Dog 【アグダード戦争】172-174

172

　ヒシャームは、ファヴィヴァバが業者に指示して元ラドクリフ邸の屋敷と地下のあらゆる所に付けた”お粗末製・無差別即死罠システム”を、右手に掴んでいる黒い指揮棒1本で難なく全てを弾き返した。乱射レーザー光線すら指揮棒だけで弾き返す。指揮棒には持ち手部分に3個ボタンが並んで付いており、ボタンを押す事で3種類の武器に変化出来る特殊な仕様となっている。が、罠如きの対処で武器を変形させる必要は無かった。毒ガスについては、シルフィ達同様に携帯式のガスマスクを燕尾服の内ポケットに、年相応により数年前から必要不可欠になった循環器系の錠剤薬数品目と一緒に入れている。
　罠を弾きに弾きながら前進を続け、攻撃が止まった頃に近くに置かれていた、矢が大量に刺さっている来客用ソファーに腕と足を組んで座る。ーー現在の齢は58歳。還暦間近の老執事となったヒシャームが『金の亡者』ファヴィヴァバに、特別待遇で15年もの長い間一銭も金を搾り取られずに契約して貰えている最もな要因は、己が持つ非常に高い戦闘能力だった。