Bounty Dog 【アグダード戦争】135-136

135

 シルフィが運転する小さな軍用運搬トラックは、まるで生き返ったように滑らかに動き出した。だが”滑らか”は最初だけだった。ゴミ山から出た途端に、エンジン音を喚き上げて、猛スピードで砂漠の地を走り出す。
 タイヤが速攻地雷を踏んで、弾けた爆弾がタイヤを焼き焦がす。車の動きが早過ぎて、イシュダヌが撒く大半が対人用の即死爆弾の威力では、戦地を走れるよう特殊な素材と加工を施している軍用トラックのタイヤは数秒間燃やせる程度で、穴を開けるすら出来なかった。
 ガタガタ揺れる爆走トラックを運転しながら、シルフィ・コルクラートは荷台に座っている運搬相手の軍曹に、運転席から声を掛ける。
「この子の馬力なら、恐らく3、4時間で目的地に辿り着ける筈よ。地図を貸して頂戴。通るのに危険な場所も示して貰えると助かるわ」
 軍曹は素直に従った。目的地である北東部の端にある大きな建物を記した図形に丸印を付ける。鳥居とリヤウインドの隙間から、運転席に向かって畳んだ地図を差し込んだ。地図を差し込みながら、軍曹がサッパリとした態度でシルフィの背中に向かって言う。
「デブの監視塔とブサイクが手当たり次第にこの土地の全域に撒いてる地雷原だが、正直今どれくれえあるのか全然分かんねえ。俺がその道を通ったのはガキの頃で、あの時よりぜってえ滅茶苦茶増えてやがりそうだから、すまねえが取り敢えず、それっぽいの見つけたら教えてやるから迂回してくれ」
「ウィー(了解)、軍曹。仕方無いわね」
 トラックが更にスピードを上げて砂漠の地を走ると、ギアを適正なものにチェンジしながら、シルフィは後ろ手で軍曹から地図を受け取り、直ぐに横に座っているヒュウラに地図を渡した。

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