Bounty Dog 【清稜風月】205-207

205

 ヒュウラは人知れず他の生き物知らずに人間の道具を増やしていた。最強道具と万能道具は無いが、準最強道具は今回も手に入れている。
 新たな道具達は柄杓の窪みの中と、腰の両ポケットに収まっていた。櫻國酒と革の突っかけ靴半足が柄杓の窪みに、木の札と石十数個はポケットに収まっているが、周囲に居る人間は誰1人として、亜人が窃盗を繰り返しながら装備を整えている事に勘付いていなかった。
 銭湯で人間に貰った牛乳は、美味しく飲んで胃の中に入っている。時期に消化されて血とエネルギーと諸々の栄養になるだろう。身を動かす為の燃料として、此れも漏れ無く利用される。
 “その存在”の時間は余り残されていなかった。考察よりも推理よりも他の存在が伝えてくる情報よりも己の直感が最も間違いの無いモノだと友である人間に教えられている亜人は、何となくだが全ての行動を急ぐべきだと思っていた。
 ヒュウラは、Kに初めから全く興味が湧いていない。

206

 “其れ”は、虫の亜人に謎々をした。謎々の問題は、下記である。
『手の中に鍵がある。その鍵は全ての存在が生まれた時から持っている。鍵は殆どの存在が毎日1回ずつ使えるが、一部の存在は折れてしまって使えなくなる。鍵を使って次の部屋に入る行為は、全ての存在が無意識に毎日1回ずつ行う。一度入った部屋には、移動すると二度と戻れない。鍵が折れたら部屋に永遠に閉じ込められ、金と名誉も纏めて失う。折れた鍵は直せない。鍵で開けて通る扉の名は明日、入って24時間だけ過ごす部屋の名は今日、此れ迄に入っていた部屋は、出た瞬間に過去という名になる。君も持っている、使える回数が皆違うその鍵の名は?』

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