Bounty Dog 【清稜風月】 1-2

清稜風月(せいりょうふうげつ)

1

 現地の革命武装部隊と手を組んで3勢力の支配者達と死闘を繰り広げた”紛争地帯アグダード”から無事に脱出し、復興が終わった『世界生物保護連合』3班・亜人課の支部に戻る途中で偶然、”櫻國(おうこく)”という別の国にやってきた保護組織3班現場部隊長シルフィ・コルクラートは、アグダードの任務に特別保護官として同行させていた絶滅危惧種の狼の亜人に、突然休暇命令をした。
 命令されたヒュウラは仏頂面のまま、シルフィを見ながら不思議そうに首だけを傾ける。小型飛行機から持ってきた大きな木箱を2人で担いでいるミトとリングも、遠くから揃って眉を大きく寄せた。
 部下の少女ともう1体の雌の特別保護官が浴びせてくる視線を完全に無視して、シルフィはヒュウラの手を掴む。大勢の人間達が並んでいる列の最後尾で一緒に並び出した。遥か先に、入国審査所らしき独特の形をした建物がある。
 ヒュウラは一切抵抗せずに、列の動きに合わせてシルフィと一緒に前へ前へ進んだ。周囲で実に様々な人間の独自語がガヤガヤ聞こえてくる。耳を澄ませてみるが、アグダードの独自語らしきモノは全く聞こえなかった。

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