Bounty Dog 【清稜風月】164-165

164

 7ヶ月前から約1ヶ月前までヒュウラを手元に置いた状態で2対象の保護任務をしていた南西大陸の砂漠地帯は、現実から意識が少しでも外れたら死に直結する”世界”だった。故に寝ている時に夢さえも、誕生日パーティをした日とイシュダヌを”掃除”してからあの土地を脱出するまでの2週間くらいしか真面に見ていなかった気がする。
 一方で櫻國は死と常に隣り合わせの戦争地では無いお陰なのか、夢は毎晩見れる。加えて何とも言えない不思議な感覚に囚われたり、心に”ゆらぎ”が生じた時に己が古の経験を保存している記憶という脳内データの無意識再生を頻繁にしてしまう。この”世界”で産まれて生きている一部の人間や生き物は、個の能力としても霊的なモノを自在に操る事も出来ていた。
 この星は人間や生き物達にとって非常に広大である。同じ星の上にあるが身を置いて暮らす国や土地を変えるだけで、どんな命も簡単に”異世界”に行ける。東の島国・櫻國は国際保護組織の支部がある某国の常識も、北東大陸や北西大陸・中央大陸等の国々の常識も、勿論アグダードの常識も通じない。櫻國という”世界”では西洋の機械や技術に頼るよりも、大地と空気と海、生き物達と無機物達も覆い包んでいる”神聖な霊”の力を真に正しく使う事が、最も有効で手っ取り早い方法だった。

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