Bounty Dog 【アグダード戦争】191-192

191

 ヒュウラがラドクリフ邸第5棟で事前に作って用意していたブラックジャック風の鈍器は、ヒシャームに一瞬で斬り壊された。武器は偽物の宝石を玉にして撃つスリングショットだけになっている。あと、己の強靭的な破壊力を持つ足があるが、怪我が悪化していて痛くて痛過ぎて堪らなかった。
 ナスィルに拳銃で散々撃たれた足は、今は麻痺してくれずに脳の痛感を頻繁に刺激して襲ってくる。気絶しそうな程、痛かった。リングは背負っているヒュウラを守ろうとはしてくれているが、戦闘力が高過ぎるヒシャームを心底に怖がっていて、実質的には背負われているヒュウラが指示して操縦してやらないといけない状態になっている。
 ヒシャームは、ヒュウラも勝てる確率が非常に低い凶敵だと確信していた。だが此処で死ぬ訳にはいかない。この土地に来たばかりの時は、死にたいとばかり思っていた。だが今の己には、守らないといけない大事な『友』が居る。
 相手は己が命を救ったが、己も相手に心の救済をされて命を救って貰った。殺す訳にはいかない。何時も人間達に命を狙われている、何時も自分から死んでしまうような危険な事ばかりする、非常に危なかしい人間だった。
 自分が生きて、『友』を守らないといけない。早く軍曹が居る4棟に行って、軍曹をクソゴミカメレオン女から保護したかった。

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