Bounty Dog【Science.Not,Magic】68-69
68
エスナは足がずっと気になっていた。右の足首に特殊な機械の輪が付いている。アンテナも付いていた。脅威であるあの狼が付けている首輪と、形がお揃いである。
機械の輪の表面を指で叩いてミミズ文字を書いて指で弾くが、機械の輪を構成している『原子』は”お願い”をしても、全く反応してくれなかった。理由はサッパリ分からない。目を5色に変えて『原子』の特定は出来ているのに、何回”お願い”しても発信機の原子は言う事を聞いてくれなかった。
アンテナを引っ張って外そうとしても、全く取れない。折ろうと思って横に思い切り曲げていると、遠くから”友達”が大きな声で呼び掛けてきた。
「おーい!エスナ、見てくれー!!スーパーハイパーウルトラスペシャル、オレ、綺麗になったぜ!!」
身なりが綺麗になったカイ・ディスペルが、全身からホカホカ湯気を出しながら歩み寄ってきた。住宅街の適当な民家に朝から突撃訪問してシャワーを借りた9歳児は、礼儀正しい子供という武器を利用して、民家の主の伴侶からカルグクス(アサリうどん)も貰ってきていた。エスナに戦利品のうどんを1食渡す。箸は貰えていない鼠の亜人はうきゅうと鳴いて、人間の料理を指を使って慎重に食べる。すぐ側で銀の箸を使って音を立てながらズルズル豪快に自分のアサリうどんを一気に平らげたカイは、エスナに忘れていた相手の銀の箸を手渡して、箸の使い方を教える。うきゅうと鳴いて、2本の銀の棒でうどんを挟んで慎重に食べた。口を細かく動かして、超細かく噛みながらカルグクスのうどんを1本ずつ、アサリを1個ずつ食べる。
スーパーハイパーアルティメット時間が掛かる鼠の食事を待ちながら、カイは周囲を見渡した。遠くに聳え立っている大きなビルを見付けるなり、眉をV字に寄せる。
”敵”が大会社の社長だと知っている人間の少年は、巨大なオフィスビルに狙いを定めた。エスナの服の端を掴む。引っ張って、相棒を引き摺り出した。
未だうどんを摂取していた鼠はうきゅうと鳴いて驚愕すると、振動する度に汁を溢しつつ、うどんを超ゆっくり食べる。人間の友達に引き摺られながら、中央大陸東部の半島で”保護”活動を本格的に開始した。
エスナは揺れる汁うどん&慣れない人間の食器と戦いながら、瞳の色を5色に変えて『原子』を見る。己しか此の世界では存在が見えない物質を見て、うどんを食べながら思った。
ーー此の場所の原子は大人しい。ボクのお願い、素直に聞いてくれそう。ーー
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