Bounty Dog 【アグダード戦争】203-205

203

 シルフィ・コルクラートは、探し人を漸く見付けた。苗字だけ分かっている”アグダード民間お掃除部隊”の隊長が、散々探していた5棟の何処かから、突然姿を現した。
 着ている装備と右の二の腕に巻いている紺色のバンダナに目立った傷は一切無いが、黒いズボンは酷く破れていた。頭にヘアバンドのように巻いていた紺色のアラビアターバンも外している。露出している顔と腕が打撲傷だらけになっていた。気のせいか、足元が熱っぽくなっているような感じがした。
 腐った動物の脂が燃えているような、異臭も仄かにしてくる。何があったのか詳細は分からないが、今の彼は殺気が無くなって落ち着いていた。
 ファヴィヴァバの死体も見つけていなかったが、彼が”掃除”したのだと相手の様子で確信した。通信機で左手首に付けて貰っているブレスレット型発信機の生体情報を見る。見付けた相手は傷だらけの血だらけなのに、ブレスレットの生体情報は極めて正常値を示している。発信機が故障しているのだと気付いた。コレはアジトに帰ってから直ぐに、保護組織に居る機械に強い知り合いに連絡して、修理の仕方を教えて貰わないといけないと思った。
 此方に向かって歩いてくる相手に、シルフィは駆け寄りながら何時も使っている渾名で呼び掛ける。彼は此方に気付いて、疲れたように笑ってきた。至近距離まで駆け寄る。何があった?落ち着いたか?歩けるか?支えてやるから、一緒にこの屋敷を出よう。ヒュウラ達は先に脱出している。次々と口でこのような内容を言ってから、彼に白銀のショットガンを掴んでいない方の手を差し伸べると、
 サッパリとした何時もの態度で断られた。自分は未だ1つ此処でやりたい事があるから、先に脱出してヒュウラ達と待っていろと、何時もの賊のような喋り方で言われて、彼は己を残したまま、4棟に向かって歩いて行った。

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