Bounty Dog 【清稜風月】263-264

263

(良い加減にして。調子に乗らないで)
(何で1回見せただけで、教えても無いのに私を超えて其の場で直ぐに再現するのよ。どんな事も)
(殺す時期を短縮してやる。今直ぐよ)

 ーー”人間”と同じか超えていると、調子に乗り続けていたからだ。ーー

 ーーどうして、人間じゃ無い存在は、人間では無いという曖昧な理由で、人間のように振る舞えば人間から容赦無く罰を受けさせられるのだろう?上では無く対等でいようとしても、理不尽に罰せられないといけないのだろう?人間同士でさえ、そんな理不尽な”捌き”ばかりが溢れている。肌の色やら、血統やら、生まれた国やら生まれた土地やらの人種で先ず優劣を付ける。同じ人種だったら、優劣天秤の重石にするモノは宗教だ。宗教で無ければ、年齢やら性別やら見た目の美醜やら学歴やら職歴やら云々挙げるが、大抵はその裏側に付いている、相手と己が今持っている金の量と、将来持つだろうと想定する金の量を優劣天秤の重石にするんだ。
 極めて阿呆で下らないと、お前は絶対に言うな。奇遇だ、僕も今そう思ってる。ーー
 睦月は凍っていた。足元に2つ、人間のような生き物が倒れている。1人は見知らぬ西洋人で、事切れていた。後頭部から細い煙が昇っている。己が撃ったライフル用の銃弾が脳にめり込んでいる。
 睦月が撃つ前に、相手は既に死んでいた。睦月は其の相手には微塵も興味が無い。睦月の意識はもう1つの生き物だけに注がれていた。
 其の存在は女性で、桃色の振袖を着ており、一つ結びにした桜色の長い髪を垂らしている。背中に4箇所、小さな穴が開いていた。穴から血が溢れ出ており、着物を汚しながら細い筋を作って流れ落ちている。
 羽を全て捥ぎ取られて捨てられている日雨は、骸になっている人間の二の腕を己の手で握っていた。背後にある”毒の洞窟”から離すように引き摺った跡が地面に付いている。助けようとしていたらしい。骸は日雨の羽を持っていなかった。
 睦月の体が解凍された。日雨が僅かに動いたのが見えるや否や、彼女の側に駆け寄る。抱えて、仰向けにしてやった。
 日雨は生きていた。だが顔も体も真っ青になっており、呼吸が極度に浅かった。

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