Bounty Dog 【アグダード戦争】140-141

140

 ミト・ラグナルは上司と未だ認めていない年上女性保護官に、素直に従った。準備の為に荷台の後方を向きながらミサイルの位置を調整していると、気配を感じて背後に振り向く。ヒュウラが荷台に初めて振り返ってきていた。シルフィが肩を掴んで無理矢理振り向かせていた。
 何時もしている仏頂面で此方を見てきた時、少女の心に怒りが焚き付けられた。焚き付けられたのは2回目だ。1度目は数ヶ月前。北西大陸の川でした任務で、リーダーの命をその時救ってくれた超希少種の亜人を、勝手に蹴り殺した時。今、また思った。ーーこのロボットみたいな顔が、やっぱり無性に腹が立つ。ーー
 亜人と人間のそれぞれの立場の違いに加えて、お互いが経験している状況と知る事知らない事が多過ぎて、違いと無知が1人と1体のすれ違いを頻繁にさせていた。お互いの事を細かく共有したいと、何方も全く思った事が無い。お互いがお互い何時もそれぞれで動いていて、同じ目的でキチンと連携して何かを実施したのは、ミトがヒュウラに出会った、とある場所にある山の麓にあった村で、何方も殺そうとしてきた狩人リカルドを、手錠でお互いを繋いだ状態で倒した時だけだった。
 出会って保護して、数ヶ月一緒に任務して直ぐ近くに一緒に居て過ごしていても、未だお互いは保護対象の亜人と保護官の人間という、実質的には非常に薄い関係のままだった。
 身体の距離は近いけど心は遠い場所に”居させている”、未だ全く理解をしていない亜人の青年に向かって、ミトは睨み目をしながら小さな声で毒吐いた。
「ヒュウラ、見ていなさい。コレから始まる、あんたが望んでいる地獄の闘いを」

ここから先は

3,889字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!