Bounty Dog 【清稜風月】148-149

148

 星を半周する程の距離間で行われた、国際保護組織亜人課保護官と超希少種亜人・麗音蜻蛉の日雨専属護衛役による“通信作戦会議”は、2時間半も掛けられて実施された。会議は、先ずシルフィが”麗音蜻蛉殺し情報提供者殺し容疑者・K”が殺害した和菓子屋店主が呼び寄せたらしき密猟者グループについて事前に調べていた情報を睦月に伝えてから、睦月が密猟者グループと同じ日に入国していたとシルフィに伝えられた、怪しい北西大陸人の少年”S・M”の詳細情報をシルフィに教えた。シルフィは睦月が甘夏に写真付きの入国申告書を返還しているのでSの容姿を確認出来なかったが、睦月が桜並木の数本に付いていた血飛沫とヒュウラが発見した針付き輸血チューブの残骸について報告してきた時に、報告者同様にシルフィも”SはKに口封じで殺された”と推理した。
 唯、ヒュウラの嗅覚が”非常に優れていた”と睦月に伝えられた時に、シルフィは数分間沈黙した。不審がった睦月に「話を続けろ」と促されたので口を再び開いたが、シルフィは”ヒュウラの嗅覚は人間より若干良い程度”だという事実について、双子の弟だけが明確化させていて己にも伏せられているが、彼女は直感で不信に思った。
 2人の人間の会話にコノハが加わる。シルフィ・コノハ・睦月が其々持っている情報という札を全て出し合ってから札を纏めて整理し、3人共に納得する今後の活動方法について提案し合う。3人の内のいずれかが却下して別の者が提案をするを何十回と繰り返した末に、シルフィが通信機械を使って遠隔で、睦月達が現地で日雨とヒュウラを護衛しながら、ヒュウラは勿論参加の形で帝族2人が行う可能性がある愚行の阻止をしつつ、帝族2人および密猟者達を操っている元凶の人間”K”の櫻國追放と『国際保護法』違反で逮捕する事で、明日から行う任務方法を決定させた。
 シルフィは情報部の保護官を1人も使わず、単独で睦月達をコノハの通信機とヒュウラの首輪越しに遠隔補助をする。睦月が日雨の存在を国際保護組織に広く知られたく無いと拒絶した為だったが、シルフィ自身も己が所属している組織を”エゴ組織”だと心底に思っているので、上機嫌で相手の我儘に応じた。

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 シルフィの身と魂がある、国際保護組織の支部が建っている某国の時刻が正午になった。雌体の猫の亜人が班長室にやって来て「昼ご飯ニャ」と言ってくる。迎えついでにシルフィのヘッドセットを勝手に拝借してヒュウラに遠隔で挨拶をしてきた猫の亜人に、狼の亜人とついでに虫の亜人が挨拶を返した。猫女は微塵も嫉妬せずに相棒の狼の新しい友である虫女にニャーニャー鳴きながら元気に自己紹介と相棒の世話を依頼すると、虫女が「承知しましたー」と元気に答えて猫女とも友達になった。
 シルフィは食いしん坊の猫に半ば強引に引っ張られて、食堂で昼食を摂る為に作戦会議から離席した。そのまま”支部がある国の夕方”まで猫と部下の保護官と一緒に別の亜人保護任務に出動すると櫻國組に告げて、ノートパソコンの通信を切って去って行った。
 間も無く深夜になろうとしている櫻國の日雨の家で、会議を一方的に終了された睦月は機嫌を損ねていた。コノハが睦月に『曲者シルフィ』の通り名を持っている上司の独特かつ扱い辛い性格と高い実力を説明して説得している間、同じ空間に居る2種の亜人達は平常運転である自由全開で其々過ごしていた。

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