Bounty Dog 【清稜風月】75-77

75

「リーダー。ヒュウラ君が動きました。あのお煎餅セットを持ってますけど……コレって」
『良いわね。トレビアン(素晴らしい)、御利口』
 出身地では無い憧れの国の言葉を混じらせて、シルフィ・コルクラートは遥か遠方の地から、櫻國に置いている特別保護官の行動を称賛した。腑に落ちないと言いたげに眉を顰めながら、コノハ・スーヴェリア・E・サクラダは通信機を耳に当てて、上司の言葉に耳を傾ける。
 日差しが今日も強かった。通信機を肩と耳の間に挟んだ状態で、白銀の双眼鏡で保護対象(ターゲット)を目で追う。現在、彼女が居る場所はイヌナキ城の側だった。外国人観光客用に建てられている『私的客人以外侵入禁止』の案内看板の前で、遠くの建物の屋根から此方に向かって走ってくる狼の亜人を監視する。
 機械の奥から聞こえてくる上司の声は上機嫌だった。シルフィは軽い笑い声を上げてから、ヒュウラの護衛に就かせている部下に向かって指示をした。
『向かっている場所は、貴女の近くにある城よ。ヒュウラの”忍者ごっこ”を援護して頂戴、サクラダ。あの子は御利口だけどね、詰めが甘いのよ』

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