Bounty Dog 【アグダード戦争】163-164

163

 ファヴィヴァバが博物館に改造途中であるラドクリフ邸にある”自分の財産”を守る為に仕掛けていた『カラクリ防衛機能』は、軍曹とファヴィヴァバが植物の死に絶えた果樹園で会話を始めた時に、既に猛威を奮っていた。
 最初に犠牲になったのは、何故かファヴィヴァバ軍の兵士達。コルドウ用の麻酔装置の煙を吸ってぐっすり寝ていた10数人のアグダード人の男兵士達が、天井から落ちてきた無数の刃物を全身に浴びて、全員寝たまま冥土に直行した。後頭部か首に刃物が刺さった者は即死して、他の者はショック死か失血死した。
 次に罠に襲われたのは、屋敷の外にある地雷が無い茂みで休憩をしていた亜人達だった。ヒュウラが虹彩が金、瞳孔が赤い目を突然限界まで釣り上がると、向かいの壁から発射された毒矢の束を身を伏せて回避する。同じ動作をしたリングが驚愕したように大きな鳴き声を上げると、また毒矢が大量に飛んでくる。草を押し潰すようにうつ伏せになってかわした2体の亜人が茂みに何かあると思って調べると、茂みでは無く茂みの側にある外壁に、センサーのような機械の板が張り付いていた。
 毒の弓矢がセンサーから受信した生き物の体温に反応して飛んでくる仕掛けになっているようだ。ハイテクな人間の機械技術については全然分からないし勘付きも出来なかったが、茂みは危険だと亜人は2体とも判断して、匍匐前進で矢の襲撃範囲から充分離れてから、リングは足を怪我して自分で歩けないヒュウラを背負った。
 猫は狼を背負って、ウニャーと嫌々そうな鳴き声を上げる。
「ニャー、足、未だ痛い。休憩、中途半端ニャ」
 渋い顔をしてぼやくと、もう一声大きく鳴いてから、ヒュウラを背負ってラドクリフ邸の外周を走り出した。

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