Bounty Dog【Science.Not,Magic】33-34

33

 ファンタズマ(幽霊)になって12年間、此の世を漂っているが、人間として死んで12年経っても、闇は煩わしいだけの存在だった。
 望遠機能付きの暗視ゴーグルを目に掛けた小麦色の肌と黒髪を持つ青年は、監視対象(ターゲット)を丘の彼方此方にある林のひとつに紛れながら、遠隔で見つめていた。亜人らしき獣耳を生やした子供の姿を確認すると、”会ちょ”に連絡するか考える。
 若き西洋の隠密は、主人への連絡をせずに”クソガキ”達の様子を見守る事にした。暗視ゴーグルに覆われた目と顔を別の方向に動かす。遠くにある別の林から、木が薙ぎ倒される轟音が聞こえてきた。
 此方も様子を見守る。個人的に強い恨みがある”アイツ”が、単独で暴れていた。

 薙ぎ倒していたら、元植物課のルシパフィにデコピンされる程度で済んだだろう。彼は脚力が余りにも強過ぎた。実際に蹴られた木々は、根本から粉砕して葉も枝も幹も何もかもが全て無くなり完全に”喪失(ロスト)”していた。
 ミト・ラグナルも新しく買ったパイロットゴーグルを、暗視機能をONにして目に掛けていた。給料だけでは足りずに少し貯金を崩して最新機能付きの高級品を買ったが、見た目は以前身に付けていた物と全く変わらない。
 暗視ゴーグル越しに、暴れる”愛犬”を見つめていた。ヒュウラがキレている。鼠を狩りたい狼は消えた鼠を、木に八つ当たりしながら探していた。

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