Bounty Dog 【アグダード戦争】206-208

人間が自然と違うのは、弱い者程に非常に厄介だという事。

206

 アグダードを支配する3大勢力の2つ目の大将を”掃除”した軍曹とヒュウラ達は、隣の国との境の直ぐ近くにある北東の端から、掃除部隊のアジトへと帰った。
 帰りは勿論、車が無く徒歩。巨大屋敷で2日掛かりに渡って行っていた死闘の中で、車探しをしている余裕は全く無かった。実際にあの屋敷は、アレだけ広大だったのに車が1台も無かった。今は浄化された金の悪魔が、金になる物を自分のコレクション以外はさっさと売り払っていた。

 大きな怪我をした存在が、ヒュウラ以外に2つ増えた。片方の猫の亜人は、ナイフで刺された両腕を刺した張本人に適切に治療されていたので大した事は無かった。だがもう1つは、ヒュウラよりもある意味重傷だった。今は未だ少し元気そうである。だがもう、元の状態ではなかった。
 両足が動かないヒュウラを背負ってくれているが、彼も全身に酷い打撲傷を負っている。軍曹は身体の傷よりも、心の傷の方がずっと深かった。嫌がらせという施設破壊を1人でするのが大好きだった、愛していたド1流ゴミ人間・デブことファヴィヴァバを失ってしまったからでは勿論、無い。
 帰り道の旅の途中で、屋敷で死闘中にミトと連絡を取っていた軍曹のサディーク(友達)・朱色の黒布が、部下の布達を連れて軍曹達を迎えにやってきた。シルフィが思っていた通り、やはり徒歩で全員やって来て、ボロボロになっている軍曹を見た瞬間に、思っていた通り驚愕していた。
 彼だけが使う罵り渾名『ガビー(アホ)』を連呼して、一体何があったのか当然尋ねてくる。軍曹は親友である副隊長の質問に濁した答えを言う前に、大事な借り物を焼いて無くしてしまった事を謝った。
 ミトから事情を聞いて、朱色目は貸し物を無くした軍曹を一切責めずに、軍曹からヒュウラを引き剥がして、己がサディークを背負った。地面に置かれた狼の亜人は、眼鏡を掛けた方の人間の保護官に背負われる。
 愛する亜人を背負って帰りたいのに邪魔するなと最初は抗議していた軍曹だが、彼の全てを知っている朱色目が二言三言話し掛けると、
 それ以降は、一切抵抗しなくなった。負傷している人間の隊長と絶滅危惧種の亜人をそれぞれの担当が護衛しながら”民間お掃除部隊”のアジトに帰ったのは、合流してから3日後だった。

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