Bounty Dog 【清稜風月】198-199

198

 シルフィ・コルクラートは此の日以降、”其れ”が伝えてきた死の予言を忘れる事が出来なくなった。
 睦月・スミヨシは此の日、己の失態のせいで2つの大きなモノを喪失すると未だ知らなかった。
 ヒュウラは此の日に、手元にエードの物は無いが1枚の銀貨を裏から表にひっくり返した。彼という銀貨には裏面に狼、表面に人間の絵が描いている。
 コノハ・スーヴェリア・E・サクラダは此の日、体重を一気に4キロも喪失した。

 生き物の生涯は、運命に生まれてから死ぬまで延々と愛され続けたら大勝出来る。だがどんな存在よりも気紛れである運命から一度も理不尽な不幸を受けずに延々と愛される方法は、神すらも相手が理想通りの生涯を過ごせるよう幸福という糸で見えない服を編んで着せて此の世に生まれさせている筈なのに、運命が気紛れで見えない服を切り裂いて相手を理不尽に不幸にしてしまうので、全く分からない。

199

 “彼”は担当者だったが、相手に数時間後、己が審判を担当すると一切告げなかった。死神は此の世に関われない。未だ相手は此の世に生きているからだった。
 冥土で暮らし始めてから此の世にあるモノ全ての未来が多少見えるようになっている彼や”少年”や他の十数の存在達は、審判の待合室に呼ぶと相手に教えてやる事が『万物の神』との契約上、出来ない。だが『霊』は気が優しいので時々だが、其れも代わりにしてくれる。
 人間の靴の紐が突然切れたり、卸したてのヒール靴の踵が突然外れたり。強固な小物が突然壊れたり、カップの取っ手が持っている時に突然外れて落ちて割れたり。
 カラスやヨタカが騒がしく鳴いたり、山の中で潮の匂いを嗅いだり。記憶の奥底に居る遥か過去に関わった存在を明瞭に思い出したり、料理が得意な存在が作り慣れている料理を、あり得ないレベルで大失敗したり。我々の世界にある日の丸を国旗として掲げている東洋の小さな島国では、これらの前兆を『虫の知らせ』という。

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