Bounty Dog 【アグダード戦争】138

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 普段は”人間専門の清掃員”をしているアグダード人のバッター選手は、世界の野球ルールなんて知ったこっちゃ無かった。先ず打ち返そうとしているミサイルはボールじゃ無い。起爆する部分に何かぶつかれば、即座に爆発して粉砕死する凶悪な兵器である。
 其れでもピッチャー兼ファヴィヴァバ軍の兵士が監視塔から見つけた軍曹に向かって発射したヘルファイア1発目に対して、彼はその無茶苦茶な命懸けの野球プレイをやってのけた。先ず、飛んできたミサイルの先端が当たらないように身を素早く捻ると、長細い兵器の中央部分を鉄パイプの形をした即席野球バットで打ち上げる。空中でグルグル回転した安物ミサイルの先端がピッチャー側に向いた時に、軍曹は鉄パイプでミサイルの尻部分を力の限り思い切り殴り飛ばした。ジャストミートしたヘルファイアが返されて、監視塔の柱にぶつかって爆発する。
 コストカットされ過ぎているショボイ造りの軍事施設は、先端しか爆弾が付いていない劣悪品の兵器が1発当たっただけで即座に大破した。ミトが己の目の前で有言実行した軍曹が澄んだ水色の目をキラキラ輝かせながら見ている、喪失”ロスト”して火の海に包まれた、瓦礫と化した元監視塔を唖然としながら眺めていると、
 死に掛けの猫の亜人が、寝転びながら弱々しくニャーと鳴いた。彼女達が乗っているトラックの運転手をしているシルフィ・コルクラート3班保護部隊班長が、怒鳴るように荷台に向かって言ってきた。
「ヒュウラが次の行き先を示したわ!御要望は、さっき軍曹が壊した監視塔!それがウジャウジャ建っている場所に行きたいそうよ!!」

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