Bounty Dog 【アグダード戦争】295-296

295

 ヒュウラの精神も、過去の現実世界に飛んだ。着地した場所は、未だ”主人”が生きていた頃。新人保護官だったミト・ラグナルによって狩人達が麓に暮らしている山から保護されてから、当時『世界生物保護連合』3班の情報部に所属していたシルフィによって『14日間限定の特別保護官』に任命されて直ぐの頃。
 ヒュウラが今でも己の”主人”だと思っている、当時『世界生物保護連合』3班現場保護部隊の隊長をしていた、青くて跳ね癖がある短い髪をしていて、青い目に銀縁眼鏡を掛けていた人間の男に”亜人保護任務をする為の特訓”として、人間の保護官が使う専用道具の使い方を教えられていた。
 “主人”は色々種類がある保護用道具を色々紹介しながらヒュウラに教えたが、ヒュウラが興味を持ったのは1個しか無かった。たった14日しか組織の上層部から期限を貰えなかった事もあり、興味を持った道具が亜人でも比較的に使いやすい物だったので、”主人”はヒュウラに、その道具と”補助道具”として彼が当時狩人から奪い取って愛用品にしていた巨大斧を、亜人の保護任務で使うように特訓した。
 ヒュウラの主人、デルタ・コルクラートは『打撃式麻酔針』の使い方を狼の亜人に説明してくる。
「ヒュウラ。コレは針……この尖ってる部分の事な。この部分で刺すように、保護対象”ターゲット”の首に思いきり叩き付けて使うんだ。新人保護官でも扱いやすい、簡単な仕組みの麻酔装置だ。でも中に入っている液体は強力だぞ。猛獣用の麻酔薬だから、打たれた相手は直ぐに寝て動けなくなる。だから間違えて自分には刺すなよ。
 ……ん?俺の胸ポケットに入ってる茶色い液体もかって?違うぞ、コレはウイスキーっていう酒だ。コレもお前は飲むな。お前には絶対に飲ませない」

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