Bounty Dog 【清稜風月】166

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「“匹”も”体”もいと、斬り捨てにせねばならぬ程に許してはならぬ無礼。”人”ですら真は無礼でありますが……神は”柱”で御数え致さねばならぬのです。宜しゅうか、槭樹。今は十数柱しかおらぬでしょうが、麗音蜻蛉は柱で数えねばならぬ山神様ーー」
 槭樹は甘夏を無視した。己が置いた黒い本を片手で乱暴にペラペラ捲ると、眼球1つが5億エードの金に変えられると書かれている狼の亜人の生息情報と殺し方が記された頁(ページ)を見付けるなり、短い鼻息を吹き鳴らしてから指で頁をビリビリ音を立てて破り捨てた。
 帝族2人が行っているK追放に関する会議は、Kに関する具体的な話を双方が依然として口に出さない、異様な会議と化していた。コノハは個人的に激推しである”私のサムライ”こと槭樹のおじ様はNOであれと心中で身勝手に願っていた。シルフィは依然として2人ともNO……何方も”白”だと予想していた。

(一刻も早く止めさせないと。あなたはKに操られているんだ、このままだと売国奴に成り下がってしまう)
 ヒュウラは睦月への密命を終えて、コノハの横に戻ってきていた。マイダーリンが隣に戻ってきて、コノハはYESな気分だった。槭樹のおじ様も平和的にYESであれと願った。シルフィも櫻國の外から両方とも”白”であれと願っていた。無意識に、弟の写真と中身を空にして置いているミニウイスキーのボトルを見つめていた。
 コノハもシルフィも、霊的能力は使えない。ヒュウラも霊的能力は使えなかった。ヒュウラは槭樹が丸めて捨てた獣犬族の頁を遠くから繁々と観察する。他に役に立ちそうな人間の道具は無いかと、客間を目で物色していた。
(僕が止めてみせる。此の国を保護する)
 帝族はKの事ではなく麗音蜻蛉について話し合っている。真は甘夏が麗音蜻蛉に関して一方的に話し、槭樹が無視を決め込んでいるが正しかった。姫が行う”脱線本心炙り出し作戦”に当主はウンザリしているような態度を取っていた。身振り手振りで背後にいる己の部下に、薮に捨てた太刀と銃を取ってくるように指示をする。部下達は被りを振って断っていた。
 シルフィは両方”白”で間違い無いと思い始める。だが結論を付ける前に、”心眼”を手に入れた睦月・スミヨシが発信機と通信機越しに話し掛けてきた。
『シルフィ殿!僕です、睦月です!!お待たせしました!今からその客間にいる、刺客が誰か教えます!!』

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