エゴを喪失させるモノへ

 ーー上出来ね。
 あなたは此処まで、間接的だけど付いてきた。初めは早々に退場すると思ってたわよ。余りにも”あの子”は、する事やる事が自由過ぎるから。でもお互い様よ?私達も別に、あなたの気紛れに付き合わないといけない義務なんて無いもの。今もそう、辞めたきゃ今直ぐに辞めて良いの。さようなら。でも、未だ付いてきたければ何時迄も好きなだけ、しつこいくらいに付いてきなさい。
 此の物語は、此処で折り返しをする。
 漸くって所ね。彼が人間を見る旅は随分と長くなってしまったわ。でも未だ人間を見る旅は続けて貰う。私は先日の出来事でね、あの子経由でどうしても会いたい存在が居るの。
 だから任務を続けるわよ、ヒュウラ。……そして、そう。あなたも。
 此処からは、あなたにも動いて貰う必要がある。今までは間接的でも構わなかった。だけど此処からは違う。あなたが居ないと、あなたに戦って貰わないと、此の物語は全ての存在の喪失で幕を下ろすわ、確実にね。
 此の世界の人間も、きっと他の世界の人間も、みんな「自分の作った世界は汚れている」と決め付けていて、それでも皆んな「自分の作った世界は汚れていない」と証明してくれる存在をずっと待っているのかも知れない。コレはあの子にも言ったけど、あなたかどうかも、全く分からない。
 でも、あなたは私の救いよ。
 人間を学び続ける亜人の背に乗って、此の世界からエゴという”死の酸素”を人間達に与えてくる罪の巨木を喪失させて頂戴。
 あなたは此の星と全ての生き物達の守護者なの。
 あなたも、もし人間という生き物の本性に絶望して此処から離れてしまっても、咎める事は出来ない。
 だけど私のエゴで信じさせて貰うわ。あなたも此処に居続けてくれるって。
 あなたが”あなた”として生きられる本当の場所は、此処だって。

 コインを弾くわ。見せる面を逆にする。